国吉 シヤン様
沖縄県那覇市で、デイサービスとサービス付き高齢者向け住宅を運営している介護法人の代表取締役を務められていた国吉 シヤン様(以下 国吉様)は、同法人を2023年1月に、全国で介護やヘルスケア事業などを展開している法人に株式譲渡されました。約9年前に開業し、現在は顧問として同法人に在籍している国吉様。開業の経緯から今回、株式譲渡を決断された理由などについて、国吉様にお話しを伺いました。
本社所在地 | 沖縄県 |
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業態 | デイサービス・サービス付き高齢者向け住宅 |
譲渡理由 | 後継者不在などの問題も踏まえ、今後も継続的に運営することが難しいと判断し、譲渡を決意 |
ストラクチャ | 株式譲渡 |
看護師である私の妻から背中を押されたことがきっかけです。当時、私は「業界を問わず、経営者を目指したい」という想いを持っており、起業も視野に職探しをしていました。そんななか、看護師の国家資格取得に向けて、勉強に励んでいた妻から「介護職など、人との関わりが強く、人を助ける仕事が向いているのではないか」と言われました。そこで、いずれは独立開業をすることを前提に、介護事業を展開している法人に入職し、約7年間、現場経験を積みました。それから、約9年前に独立開業しました。
今年で開業10年目を迎えますが、昨今の介護報酬改定の内容からもうかがえる通り、介護施設や職員に求められる機能も高度化している中で、これから10年後、さらにその未来について、方針や考えがまとまっていない状態が続き、このまま一人で経営者を続けることができるか、ずっと悩んでいました。
譲渡について考えるに至ったターニングポイントは、私が病気を発症したことです。その際に、経営者として走り続けることに難しさを感じました。
また、新たな施設の立ち上げを行うことで、事業を拡大する構想ももともとは持っていた中で、後継者候補を育てていくことも経営者である私の仕事ではあるものの、私一人の力だけでは思うように進めることができませんでした。
そこで、職員の未来を守るためにも、信頼できる法人に託すことができる、事業承継という選択肢を考え始めました。
私は今回、株式譲渡という形で法人ごと、事業承継をしたので、はじめはそれで終わりだと考えていました。そのため、引退することに後ろめたさや申し訳なさを感じていましたが、譲渡先からの希望もあって、現在は顧問として籍をおいています。
希望をいただいた当初は、私が顧問として在籍することへの違和感がありましたが、実際には、譲渡先と職員双方の手助けをすることができています。事業承継後も今回のように顧問という立場で法人の成長に貢献できていることをとても嬉しく思いますし、何より、事業承継は法人が発展していくうえでの一つの選択肢であると実感できています。
これからも譲渡先や職員の皆さんと一緒に、法人の未来を作っていきたいと考えています。
そうですね。現在は週に2回程度、職場に顔を出しています。職員も安心してくれていますし、私自身ももし、何かトラブルなどが起きてしまった場合は、助ける気持ちでいます。譲渡先の法人からも「体調が良くなった際はいつでも、戻ってきてください」と温かい言葉をいただいており、良好な関係を築けています。
二点あり、一点目は「既存職員の働く環境を守る」こと、そして二点目は、同法人のさらなる成長に期待をして、事業承継を選択しました。
既存職員のうち、開業当時から私と一緒に同法人の成長に寄与してくれている職員も複数名いますし、多くの職員は5年以上勤務してくれています。そんな職員たちを、私の引退をきっかけに蔑ろにはしたくなかったので、事業承継を選択しました。
また、地域の利用者の方々のためにも、大規模な介護グループの一員になることで同法人のさらなる成長を期待していることも理由の一つです。
私は一緒に仕事を進める「ヒト」で判断をするので、事業承継の仲介を専門業者に依頼する際は、CBパートナーズの沖縄担当のコンサルタントに依頼することに決めていました。実は、約2年前にも一度、事業承継について相談をしているのですが、その際は経営も安定しており、節目の10年まで、まだできることがあると感じたためもう少し頑張りたいという想いがあり、譲渡の決断ができずにいました。一方で、今回、私自身の体調不良などのきっかけが重なったことと、10年まで後1年と迫ったことで決断に至りました。担当の方は、2年前に相談をした頃から、私の想いを一番大切にし、適切なアドバイスをくれていました。親しみやすい人柄に惹かれて、本件も依頼しました。
代表の方の行動力と人柄が決め手です。大規模な介護グループの代表の方にも関わらず、対面できちんとお話ができたことで、お互いの方針や考え方について、理解を深めることができました。例えば、職員が自分たちの評価や報酬をあげたいと考えた際に、どうやったらあがるのか、まずは職員自らが考えて、そこに適宜アドバイスをするというような、職員の考えや行動を重んじる形でマネジメントをされる方だと感じたので、そこに惹かれました。
職員への伝え方については非常に慎重になりましたが、苦労したことは特にありませんでした。本件を改めて担当コンサルタントに相談した時期が2022年の6月頃で、初めて今回の譲渡先とお会いした時期が同年の9月頃でした。それから事業承継が完了した時期が2023年の1月なので、大きなトラブルもなく、非常に円滑に進みました。
私は「既存職員の働く環境を守る」ことを、譲渡先を決めるうえで最も重要な軸としていました。そんななか、実際に事業承継をきっかけに退職した職員はおらず、とても良かったと感じています。既存職員のなかで昇格者も決まり、高いモチベーションで業務に励んでくれています。
そうですね。事業承継をしたことが、既存職員の不安や、職場を変えるきっかけに繋がってしまうことを一番心配していたので、退職者が出なかったことをとても嬉しく思っています。
これから、状況が変わることも出てくるかもしれませんが、現時点では特に心配事もありません。譲渡先の法人の活躍により、施設が益々発展することを期待していますし、楽しみに感じています。
2つの施設を合わせて約30名の職員と、きちんと1対1でお話をする時間を作って、その方に合った形で丁寧に伝えることを、気を付けました。例えば、施設長などへの昇格のお話についても、普段の働き方やスキルを踏まえて、一人ひとりに「推薦したいと考えている」と相談をしました。丸2日間と時間をかけて、きちんと全員とお話をして良かったと感じています。
ネガティブに捉えている職員の方はおらず、皆さん、前向きな姿勢で話を聞いてくれました。私自身、事業承継については、道半ばで自分のみが引退をすることに少なからず申し訳なさも感じていましたが、職員の反応を見て驚きましたし、安心もしました。
現在は、病気の治療に専念している最中ではありますが、将来的にはまた、介護福祉業界で活躍したいと考えています。
これまでの経験から、障害福祉分野にはまだまだ伸びしろがあると考えており、いずれは就労移行支援を行う法人を立ち上げたいです。
また、外国籍の方の夜勤労働が認められるような動きや、そのような方々の教育・育成、雇用先の提供なども行っていきたいと考えています。
これからも意欲的に「ヒト」に関わる仕事に取り組んでいきたいです。