団塊の世代の引退などにより、各業界において事業承継が増加しています。
ただし老人ホームを含む介護業界の事業承継には、独特の注意点も存在します。
この注意点を知っているかどうかで、事業継承を成功させることができるか否かが決まると言っても過言ではありません。
そこでここでは、老人ホームにおける事業承継について、その種類やポイントについて解説いたします。 ぜひ、参考にしてみてください。
老人ホームは全体を一括りで“老人ホーム”と表現されることも多くありますが、実際には様々な種類の老人ホームが存在します。
特別養護老人ホームなど行政等が福祉施設として運営する施設がある一方で、住宅型有料老人ホームなど企業が民間施設として運営する施設も存在します。
本稿では住宅型有料老人ホームなど、主に企業が運営する民間施設を老人ホームとして、以下の解説を行います。
団塊の世代の引退などにより各業界で事業承継が増加していますが、老人ホーム業界も例外ではありません。
老人ホームの事業承継には、他の業界とは異なる独特の事情も存在しますが、下記が代表的な理由となります。
それぞれについてより詳しくみていきましょう。
人口のボリュームゾーンである団塊の世代の引退により、各業界で事業の後継者問題が生じています。少子化の影響もあり、親の職業を子供が継ぐという光景も少なくなりつつあります。
これは老人ホームに限りませんが、国内では特に中小企業では後継者を探すのが難しい状況にあります。
また高齢者が居住し、24時間365日気を抜くことができない老人ホームの運営は、他の事業に比べ経営者の責任及び負担が重く、他の企業以上に後継者のなり手が少ないといえます。
少子高齢化を背景に、国内の多くの企業で人手不足の状況にあります。
高齢者人口が拡大する中で、老人ホームを含む介護事業は利用者の増加もあり、特に人手不足の状態にあり、いずれの施設も人員の確保に苦労しています。
しかし既存の老人ホームが他の老人ホームの事業承継の譲受先となることで、相手先の人員を自社グループに迎えることができます。
よって人員確保を自社での採用のみならず、同業他社の事業の譲受先となることで行う老人ホームも存在します。
老人ホームの事業承継を受けることで、譲受先は施設及び人材を獲得することができます。
老人ホームをゼロから立ち上げる場合に比べると、事業承継はスピーディーな事業拡大を行う有力な手段です。
特に不動産事業としての側面も持つ老人ホーム事業は、他の介護事業に比べ収支が読みやすい面もあり、事業拡大を目的とする事業承継が行われやすい背景ともなっています。
事業承継には下記3種類があります。
上記のうち親族間承継は子供などの親族が事業承継を行い、親族外承継は親族ではないものの社内の有力幹部等が事業承継を行うものです。
両者は事業承継自体の発生はありますが、実質的には関係者による引継ぎであり、経営体制の大きな変化はすぐには生じません。
一方でM&Aによる事業承継は、他社の子会社となる場合が殆どです。
そのため事業承継後は経営体制に大きな変化が生じます。
ただしM&A前の交渉において、従業員の雇用や身分については重点的に交渉がなされるケースが殆どです。
老人ホームの事業承継を行う際の主なポイントは下記となります。
さらに詳しくみていきましょう。
どのような形式を取る場合でも、事業承継には法律及び税金が密接に関連します。
事業承継自体は様々な業界で行われていますが、老人ホームは介護保険や行政が関係するケースもあるため、事業承継の方法によっては、特殊な手続きが発生する場合もあります。
よって老人ホームの事業承継の際は、通常の事業承継時の法律や税金に詳しいだけではなく、介護事業全体の事業承継に通じた専門家に依頼することで、リスクを抑えた形での事業承継が可能です。
事業承継は“やる”と決めても明日や来月実現できる訳ではありません。
相手が必要とされ、また相手が決まった場合でも、実現に向け株主総会開催など様々な必要プロセスが存在します。
そのため、事業承継を行う際は、充分な時間を用意して取り組む必要があります。
ただしM&Aでの事業承継を行う際は、相手方との関係はタイミングが影響する面もあります。よって準備に十分な時間は必要ながら、タイミングも非常に重要です。
事業承継を行う際は、正確な事業価値(企業価値)の把握が必要不可欠です。
事業価値の算出は様々な計算式があるため、個人でも算出自体は可能です。ただし、実際に相手方が受け入れるかどうかは別問題となります。
専門家に事業価値の算出を依頼することで、正確な事業価値の算出が可能です。
当初想像した数字より低く算出されるケースもありますが、事業承継に当たっては対象事業の現実的な事業価値を把握した上での対応が必要となります。
特に介護事業においては、介護人員確保のために事業承継の譲渡先となるケースがあります。
よって老人ホームのスタッフの充足率は、事業承継の譲受先企業から見た場合、大きな評価ポイントです。
日々の事業運営の観点から、人員の確保を行うことは当然の行為となりますが、この当然の行為が事業承継を有利に進めることにもつながります。
個人事業の事業承継の場合は、個人や顧問税理士などでも手掛けることができます。
しかし一定規模の事業を有する場合は、M&A仲介会社への相談が下記の理由からおすすめです。
この2点について、さらに詳しく解説していきます。
M&A仲介会社には様々なM&A事例の蓄積がなされています。
M&Aはケースバイケースの部分が多いため、経験値がモノをいう世界でもあります。
M&A仲介会社に相談することで、過去の事例を踏まえて自社に最適な事業承継プランの提案を受けることができます。
中小企業対象のM&A仲介会社の多くは、幅広く相談を受け入れるスタンスを有しています。
事業承継について、最初の段階でアドバイスのみをもらうこともできます。
積極的にセミナーを開催しているM&A会社もあるため、セミナーに参加しその後の相談会等で簡単なアドバイスを受けることも可能です。
他の業界同様、老人ホーム業界においても経営者の引退による事業承継が増加しています。
事業承継にはM&Aでの事業売却や親族間承継などの選択肢がある中で、介護業界独特の状況も踏まえて、ベストな選択を行う必要があります。
CBパートナーズは、老人ホームを含め介護業界の事業承継に多く携わった経験を有しています。
介護保険や行政との折衝等、独特の注意点もある老人ホームの事業承継をお考えの際は、まずCBパートナーズに相談してくださいませ。
初歩的な質問でも構いませんので、お気軽にお声がけください。