介護保険が始まってもうすぐ20年になります。
介護保険が始まる以前や、始まる時期に介護事業をスタートした法人の経営者の方は、事業承継の時期に差しかかっていることから、M&Aが進んでいます。
特に、有料老人ホームを運営されている法人は、不動産を所有されているところも多く、利用者は入居者であることから、簡単には閉鎖できません。
そこで、
“不動産ごと承継したい”
“有料老人ホーム含め事業の運営を承継し、不動産の管理だけを残したい”
などといったニーズが高まっています。
そして、譲受を希望されている法人についても、
有る程度収益の安定性が見込める老人ホームを希望される法人が増加しております。
そこで、今回のコラムでは、
老人ホームのM&Aの方法とポイントを解説させていただきます。
急速な高齢化が進む国内では、様々な種類の老人ホームが増加しています。
国内全体で見ればまだ数が足りない状態にありますが、高齢化の進展も地域差があり、施設に余剰感のある地域も生まれています。
また2000年に介護保険制度スタートから約20年が経過し、老人ホームを経営するオーナー経営者の高齢化による後継問題も生じるタイミングを迎えつつあります。
老人ホーム業界を全体で見れば施設が足りない現状があり、今も成長市場ととらえることができます。
しかし高齢化社会の深化及び介護保険制度導入約20年経過というタイミングでもあり、成長一辺倒ではない状態にあります。
一言で老人ホームと言っても、
住宅型有料老人ホーム、介護付有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、グループホームなど種類も多く、料金やサービスも一様ではありません。
有料老人ホームは、
「介護付」「住宅型」「健康型」の3種類が存在します。
「健康型」は介護サービスを受けることを想定していない上、認知症や要介護の状態になった場合は退去を迫られることになるため、現在のニーズにマッチしているとは言い難く、その数は急激に減少しています。
そのため有料老人ホームは「介護付」と「住宅型」の2種類に大別できると考えてよいでしょう。
M&Aで需要(人気)のある老人ホームと特徴は以下の通りです。
介護付き有料老人ホームは、人員・設備・運営に関する基準をクリアして、自治体の指定(認可)を受けて運営がなされています。
また介護保険サービスの1つである、「特定入居者生活介護」に該当します。
介護付き有料老人ホームは介護費用が定額制であり、利用者は費用面で安心して生活できます。
また介護職員・看護職員の配置が義務付けられており、手厚いケアを受けることもできます。
参考記事:
https://kaigo.homes.co.jp/manual/facilities_comment/list/yuryo/kaigo/
専門スタッフによる介護サービスをその場で受けることができます。
外部サービスが必要ではなく、施設内ですべて管理・運営ができることから、全国規模で展開をされている大手法人のニーズが高い。
30室以上の規模があれば、大手法人も検討されている。
最低でも20室以上はないと、M&Aで承継することは難しいと思われます。
グループホームは認知症高齢者を対象に、少人数(上限9人)で家事などの役割分担をしながら共同生活を送る、地域密着型の小規模介護施設です。
また介護保険上「認知症対応型共同生活介護」に位置付けられます。
入居者及びスタッフが共同で日常生活の活動を行うことで、入居者の認知症の進行を緩和し安定した生活が可能となります。
参考記事:
http://www.ghkyo.or.jp/greeting/whats-grouphome
https://kaigo.homes.co.jp/manual/facilities_comment/list/other/group_home/
https://www.sagasix.jp/knowledge/guide/grouphome/
認知症の高齢者を対象にしており、介護付有料老人ホーム同様、
介護サービスをその場で受けることができます。
1ユニット9名以内で形成され、介護・看護の人員配置も手厚く受けられます。
M&Aを利用しやすいのは、2ユニット以上の施設です。
1ユニットのみの施設は採算が取りにくいため、立地や周辺施設の状況が鍵となります。
他にも、
住宅型有料老人ホームやサービス付高齢者住宅などもありますが、
介護サービスについて外部業者を利用しなければいけないため、
自前で介護サービスを運営されており、有料老人ホームとセットで
承継できないとM&Aは難しいと思われます。
また、上記に挙げた人気の2施設については、総量規制の対象となり、自治体による公募に申し込み、採択されなければ開設許可が得られないため、M&Aをするメリットがとても大きいです。
老人ホームをM&Aで譲渡するメリットは次の3点をあげることができます。
それぞれ下記で詳しく解説いたします。
老人ホームの経営には施設の維持費や職員への給与に加えて、施設の建設時の借入金の返済など、様々な支払いが発生します。
入居率が損益分岐点を確実に上回っていれば、資金的な問題は殆ど発生しません。
しかし損益分岐点ギリギリであったり、損益分岐点を下回る場合、そのままの状態では施設維持のための資金が不足することになりかねません。
老人ホームをM&Aで売却し経営を他者にゆだねることで、老人ホームのオーナー経営者はその立場から外れるものの、資金不足に陥るリスクから解放されます。
老人ホームの経営は利用者の住居を運営していることに他ならず、仮に廃業した場合は入居者が新しい住居を探す必要があるなど、他の事業に比べ非常に大きな影響が生じます。
一方で老人ホームの経営者にも高齢化問題が生じつつあり、後継者問題も発生しています。
少子化の影響もあり、老人ホームに限らず家業を継がずそのまま廃業に至るケースも増えています。
廃業が利用者に著しい不利益を生じさせる老人ホームでは、M&Aでの企業売却(施設売却)という手段の活用が、後継者問題解消の有力な選択肢となりえます。
老人ホームは、施設の入居率に経営が大きく左右されます。
大手企業はマーケティング力・営業力に秀でており、大手の傘下入りすることで経営が安定し、従業員の雇用の維持・確保に前向きな影響が生じることが多いといえます。
また老人ホームのオーナー経営者も施設を売却後、そのまま買収側企業の社員となり、施設管理者等に就任するケースがあります。
これにより旧オーナーの雇用確保もなされるため、施設売却後の旧オーナーの生活の安定も果たすことができます。
老人ホームを譲渡、あるいは譲受ける場合の価額は以下の観点で評価されます。
居室数から取得加算までが施設面、人口推移と高齢者人口推移が環境面のポイントになります。
居室数と稼働率で施設の最大売上高の算出が可能です。
また人員配置以下の施設面のポイントから、施設の維持コストの算出がなされます。
これらの計算をもとに、該当施設の買収後の現実的な収益性が算出されます。
また収益性の高い物件であっても、過疎地域など立地条件が悪ければ、将来的な入居率低下のリスクがあります。
そのリスクは、地域の人口推移、高齢者人口推移で把握が可能です。
事業価値算出の際は、施設面と環境面を総合的に踏まえて算出します。
不動産価値は下記の3点がポイントとなります。
事業価値の環境面とも重なりますが、老人ホームといえども立地条件は事業成否の大きなカギを握る要因です。
また築年数・建物構造の材質といった建物自体のハード面も当然、施設の不動産価値を大きく左右します。
仮にボロボロの建物で老人ホームを運営の場合、買収希望者が不動産価値を算定したら、不動産価値はゼロどころか取り壊し費用でマイナス、という可能性も生じます。
財務諸表などと合わせて上記に記した観点から
総合的に判断します。
これから介護事業を広げていきたい法人にとって、有料老人ホームを買収することは、とても有効な手段になります。
また、譲渡をお考えである法人にとっても、今までの介護事業の運営経験を評価され、大きな創業者利益を獲得することが可能です。
しかしながら、老人ホームを買う場合も、譲る場合も、さまざまな点に注意をする必要が有ります。
たとえば、以下のような点です。
少子高齢社会が進んでいくため、介護事業の市場はまだまだ伸びていきます。高齢者はどんどん増えていきますし、人生100年社会と呼ばれる社会に突入するため、定年後の住環境には、今まで以上に注目されるでしょう。
その中で、選ばれる老人ホームかどうかは、人口の推移に対して、高齢者人口の推移はどうか。働き手は賄えそうか。といった点を調べる必要が有ります。
地域包括ケアが謳われる中で、地域において自身の老人ホーム(あるいは譲受け対象の老人ホーム)はどのようなポジションを取っているのか、他事業所と比べてどうなのか。
今後、人口が減少していく中で、他事業所とのシェア争いは免れません。そこで、周りの施設はどうなのかを客観的に知っておく必要が有ります。
大手不動産会社において建物の構造不備が発見されたニュースが話題となりましたが、老人ホームにおいても建物に不備が無いかは、チェックする必要があります。
特に、築年数が10年以上経過している建物については、修繕の必要があるかどうかも含めて細かく調べることが重要です。
M&Aをする際に、争点になりやすいことが人員の雇用継続です。
M&Aとなった場合に、従業員を譲受先が補充する必要があるかどうかを正しく確認するためや、定期監査が入った時に減算などの指導を受けないためにも、現在の人員配置の状況を整備する必要があります。
特に、代表者が施設の管理者をしている場合には、譲受をする法人にて管理者を用意する必要があります。
その管理者が用意できるかどうかも譲受けをするために必要なポイントになりますので、正しく知っておく必要が有ります。
老人ホームのM&Aを進めていくためには、専門的な知識が必要です。
老人ホームの事業譲渡、事業買収に興味がある場合は、
ぜひ医療介護福祉事業専門のM&AアドバイザーであるCBパートナーズにお問い合わせください。
老人ホームのM&Aにおける主要企業は下記となります。
法人名<証券コード> | 売上高 |
---|---|
パナソニック<6752> | 8兆27億円 |
SOMPOホールディングス<8630> | 3兆6,430億円 |
ジップヘルスケアホールディングス<3360> | 4,440億円 |
ベネッセコーポレーション<9783> | 4,394億円 |
ニチイ学館<9792> | 2,878億円 |
ツクイ<2398> | 863億円 |
チャーム・ケア・コーポレーション<6062> | 166億円 |
※直近決算の売上高数字
近年では特にSOMPOホールディングスが積極的な介護施設運営会社のM&Aを行い、急速に施設数を拡大させました。
介護事業者のM&Aでは、譲渡側が訪問介護事業者の場合、事業の状況や決算状況などの面を中心に検討を進めます。
一方で老人ホームの場合は、事業状況や決算状況に加えて、老人ホームの不動産としての価値も踏まえて検討がなされます。
よって老人ホームの売却には、不動産売却の側面があることも認識する必要があります。
老人ホームの売却には不動産や行政が関係するため、他の介護事業の売却以上に必要となる手続きが生じます。
よって老人ホーム売却を検討の際には、介護事業の売却を得意とし老人ホームの売却にも精通したCBパートナーズにぜひお声がけください。
最初の段階として、いくらくらいで売却できるのか知りたい、など軽いお問い合わせも歓迎です。
まずは一度、お気軽にお問合せください。