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医療法人M&Aの現状と事例集

医療法人M&Aの現状と事例

近年、中小企業を中心として、医療・介護・福祉業界でもM&A(会社や事業の売買)が増加しています。
では、なぜ医療法人のM&Aが増加しているのか、医療法人のM&Aにはどのような傾向があるのかについて、医療・介護・福祉業界専門のM&AアドバイザリーのCBパートナーズが、実際の事例を踏まえながらお伝えさせて頂きます。

医療法人の現状

医療法人の業界概要 

医療法人は医療法という法律に規定された形で設立された法人のことを言います。
医療法では、「病院、医師若しくは歯科医師が常時勤務する診療所または介護老人保健施設を開設しようとする社団や財団」(39条1項)と定義されています。

社団法人の医療法人

社団法人は医師免許などの特殊技能を持っている人を出資の対象として、出資者全員による社員総会の承認を得て、設立することができる法人の形態です。医療法人の場合、出資者は医師や名士となることが多いです。

ちなみに医療業界における社団法人は、出資持分ありとなしに分けられます。出資持分ありとは、出資者が退社するときに拠出金が返還されることを指していますが、実際に医療業界の社団法人のほとんどは出資持分なしとなっています。

財団法人の医療法人

財団法人は提供された財産をもとに法人を経営する形です。出資の対象は人ではなく資金となるため、財団法人の決定は、一般企業と同様に出資者による総会という形で決定されます。

医療法人の市場状況 

医療業界は病院だけではなく、一般診療所、歯科診療所、助産・看護業も含まれており、さまざまな業態があります。
ちなみに、医療業界の主要企業を挙げると以下のようになります。

企業名売上/年営業利益

日本赤十字社

約9,320億円

約163億円

国立病院機構

約8,915億円

約458億円

JA厚生連

約6,816億円

不明

済生会

約5,062億円

約85億円

徳洲会グループ

約3,441億円

約347億円

社会保険病院

約2,885億円

約53億円

上尾中央医科グループ

約1,500億円

不明

IMSグループ

約1,300億円

不明

聖隷福祉事業団

約776億円

約10億円

地域医療振興協会

約762億円

約1億円

医療法人のM&A

医療法人のM&Aの特徴 

医療法人は事業会社と異なり株式を発行していないため、基本的には合併や出資持分譲渡、事業譲渡が行われ、その他のM&Aの手法が使われることはほぼありません。
特に特徴的なのは、上記の手法のうち、出資持分譲渡が比較的多く活用される点です。

なぜなら、合併や事業譲渡は事前に行政に許可を得る必要があり、手続きに時間がかかってしまいますが、出資持分譲渡は、理事長を含む役員等の変更届及び理事長の変更登記を行えばよく、比較的短期間でM&Aを実行できるからです。

また、医療業界は医療コストの増加や人件費の高騰、診療報酬の引き下げから、設備投資にかかる莫大なコストによって経営難に陥る病院も少なくなく、これらの問題を解決する手法としてM&Aを行うという流れが活発化しています。 

最近の動向としては、病院や診療所の医師不足・経営難が進んでいたり、施設の老朽化に対して修繕費を捻出できなかったりすることが要因となり、病院や医療事業を社団法人などの別法人に譲渡するケースが増えています。 

医療法人M&Aが増えているワケ

医療法人のM&Aのメリット 

2017年ころから、病院のM&Aは比較的多く行われるようになってきました。

譲渡側の要因となっているのは、経営者の高齢化・病院の収益性の悪化・施設の老朽化による修繕費の必要性などが挙げられます。

逆に買い手(譲受側)としては、患者の受け入れ数の増加や地域の拡大、病院事業に新規参入したいなどのニーズを、新規で病院・診療所を開設するよりも時間的な優位性を持って満たすことができますし、経験のある有資格者を獲得できるなどのメリットがあると言えます。

医療法人のM&A事例集

事例1:日本郵政株式会社による社会福祉法人恩賜財団済生会への横浜逓信病院のM&A 

日本郵政株式会社は、2017年に社会福祉法人恩賜財団済生会グループへ横浜逓信病院の譲渡を行いました。横浜逓信病院は、横浜市にて内科・外科・小児科などを提供する病院です。元々は日本郵政株式会社が運営する逓信病院の一つで、戦後から地域密着で医療を提供しておりました。一方の社会福祉法人恩賜財団済生会は、1911年に設立され、100年以上続く歴史をもつ、日本最大の社会福祉法人です。この横浜逓信病院の譲渡は、日本郵政株式会社の病院事業における赤字を解消することを目的として実行されました。

事例2:NTT東日本から東北医科薬科大学へNTT東日本東北病院のM&A 

NTT東日本は、2016年に東北医科薬科大学へNTT東日本東北病院の譲渡を実施しました。NTT東日本東北病院は、2011年に発生した東日本大震災の被災時に救急医療を行っていた病院としても知られています。元々は現在の日本電信電話株式会社(旧:日本電信電話公社)で働く社員のための職域病院として1979年に開院されました。約1年後には、保険医療機関にも指定され一般利用も可能となりました。一方、譲受先となった東北医科薬科大学は、東北・北海道地区唯一の薬学教育機関として1939年に設立され、2016年に医学部設立に伴い、東北医科薬科大学へと名称を変更しました。NTT東日本は当病院の医師不足や地域問題の解消に向けた取り組みに貢献するために譲渡する決断をしました。現在では、東北医科薬科大学の附属病院となっています。

事例3:佐賀県杵島郡大町町による一般社団法人巨樹の会へ杵島郡大町町立病院のM&A 

佐賀県杵島郡大町町は、2017年に一般社団法人巨樹の会へ、杵島郡大町町立病院を譲渡しました。大町町立病院は、高度医療機器を保有している杵島郡唯一の公立病院です。診療科は内科・外科・耳鼻咽喉科・皮膚科・眼科・整形外科・リハビリ科があり、地域に対して総合的で安定した医療を提供しています。一方、譲受をした巨樹の会は2008年に設立され、関東地方でのリハビリを軸とした病院を展開し、地域のリハビリ病床不足の改善に取り組んでいる法人です。このM&Aは、大町町立病院の深刻な施設の老朽化が主な理由となって実施されました。M&Aの結果、新たに大町病院が開業され、地域の高度医療機器を保有している病院であった大町病院に巨樹の会のリハビリノウハウが承継されるため、提供する医療の更なる向上が見込まれています。

事例4:JA埼玉厚生連による社会医療法人北斗への熊谷総合病院のM&A 

JA埼玉厚生連は、2016年に社会医療法人北斗へ熊谷総合病院のM&Aを行いました。熊谷総合病院は熊谷市近辺で消火器内科・整形外科を中心とした医療体制に加え、脳神経外科やリハビリなどの診療科を展開する総合病院です。一方、社会医療法人北斗は、北海道でクリニック・介護施設など8施設を経営し、国外の事業として、ロシアのウラジオストクに画像診断センターも開設しています。北海道中心での展開であったため、こちらのM&Aを関東進出への足がかりとしてM&Aを実施しました。この事業譲渡は熊谷総合病院の医師の採用難、過去の設備投資による経営の切迫が譲渡実行の大きな理由となりました。
譲渡後、新たな法人としてスタートした熊谷総合病院ですが、現在では最先端の技術を活用した新たな試みを行うなど、さらなる地域への高度医療の充実を図ると見られています。

事例5:セコム株式会社による倉本記念病院の譲受 

少々前の話にはなりますが、1998年に倉本記念病院の土地、建物の買収を実行しました。倉本記念病院は千葉県船橋市に存在する病院で、1998年に経営危機に陥って破綻しましたが、セコム株式会社は病院経営の救済と病院経営への参画を目的として、異業種間での買収を行いました。医療法人は非営利性の担保のため、法律で余剰金の配当が禁止されています。そのため、営利法人であるセコムは、買収した土地と建物を医療法人に貸し付けるリースバック形式という出資方法を選択し、非営利性を保ちつつ、病院の経営に参画しました。当初は「セコム」を病院名に入れる予定でしたが、厚生労働省がこれを認めず、最終的には「セコメディック病院」という名前で1998年に開設しました。セコムはこの後、民間企業としてはじめて看護師の指定研修期間として厚生労働省から認可されており、医療サービスの更なる拡大が予想されます。

最後に

いかがだったでしょうか。

病院のM&Aについては、大規模な医療法人や自治体という、いわゆる大企業が登場しますが、医療法人の法人譲渡の場合は、比較的小さな案件も最近は多く見られるようになって参りました。

医療・介護・福祉業界専門のアドバイザリーとして、当社はトップクラスの成約実績を誇ります

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