介護事業関連

入居系施設の「囲い込み問題」と同一建物減算について

  1. 介護・医療・福祉のM&AならCBパートナーズ
  2. M&A・事業譲渡コラム
  3. 入居系施設の「囲い込み問題」と同一建物減算について

はじめに

近年、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)をはじめとする入居系施設において、介護サービスの「囲い込み」が問題視されています。これは、施設が運営する訪問介護事業所などを、利用者に優先的に利用させることで利用者の選択肢を狭め、介護保険給付費の増大につながる可能性があるためです。

この問題に対処するため、介護保険制度では「同一建物減算」という仕組みが導入されおり、令和6年介護報酬改定では、訪問介護において新たな区分が設けられ、居宅介護支援事業所も適用の対象となるなど、囲い込み問題への対応を強化しています。

本コラムでは、囲い込み問題と同一建物減算について、その背景や課題、今後の展望などを解説します。

囲い込み問題とは

囲い込み問題とは

囲い込み問題は、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)などの入居系施設が自社運営の介護サービスを優先的に利用させる行為として指摘されています。具体的には、サ高住に併設された介護事業所が、入居者に対して「区分支給限度額」のギリギリまでサービスを提供し、多くの介護報酬を得ることが問題視されています。

しかし施設運営側にとって、自社グループの介護サービスを利用させることは収益安定化の合理的な選択肢となり得ます。特に初期投資が大きいサ高住では、介護サービス収入が運営継続の重要な収益源となるケースがあります。

また囲い込みと批判される形態にも、利用者にとっての利便性という側面があります。同一施設内でのサービス提供は、移動負担の軽減やスタッフとの連携が取りやすいなどのメリットがあり、必ずしも全てが悪質な行為とは言えません。

囲い込み問題が起きている背景

  • 行政による指導の不十分さ
    自治体による実地指導が十分に行き届いていないことが、囲い込み問題の一因です。自治体が実態を把握しにくい状況も要因の一つとされています。
  • 自社の介護サービスを提供できる仕組み
    サ高住は介護サービスを提供しない「区分支給限度額方式」を採用していますが、併設の介護事業所を通じてサービスを提供することで、入居者を囲い込むことが可能です。
  • 価格設定の自由性
    サ高住側が家賃を引き下げるなどして、入居者に自社のサービスを利用させる仕組みを導入することができます。

同一建物減算とは?

同一建物減算の意義と目的

入居系施設における介護サービスの囲い込みが問題視され始めたことをきっかけに、囲い込みを抑制し、利用者の選択の自由を確保するため、平成24年の介護報酬改定で初めて「同一建物減算」が導入されました。

同一建物減算とは、介護保険サービス事業所と同一の建物または同一敷地内にある建物に居住する利用者に対してサービスを提供する場合に、介護報酬が減算される制度です。

導入の背景には、施設が併設する訪問介護事業所などを利用者に利用させることで、利用者の選択肢が狭まり、質の低いサービスを受けざるを得ない状況や、介護保険財政の悪化の懸念などもありました。

過去の改正とその影響

その後も、以下の通り同一建物減算は何度か改正が行われてきました。

  • 平成27年度改定:減算対象サービスの拡大、減算率の見直し
  • 令和元年度改定:減算対象事業所の拡大、減算率の見直し
  • 令和3年度改正:「区分支給限度基準額」の計算方法が変更
  • 令和6年度改定:訪問介護における新たな減算区分の導入

同一建物減算の適用条件

同一建物減算の対象となるサービス

同一建物減算の対象になる介護サービスは以下の通りです。これらのサービスが事業所と同一建物または同一敷地内に居住する利用者に提供された場合、減算が適用となります。

  • 訪問介護サービス(令和6年介護報酬改定時に見直し)
  • 訪問入浴介護サービス
  • 訪問看護サービス
  • 訪問リハビリテーションサービス
  • 定期巡回・随時対応型訪問介護看護サービス
  • 夜間対応型訪問介護サービス
  • 通所介護サービス
  • 通所リハビリテーションサービス
  • 地域密着型通所介護サービス
  • 認知症対応型通所介護サービス
  • 居宅介護支援事業所(令和6年介護報酬改定から新たに適用)

 

「同一建物」・「同一敷地内」の定義とは?

  • 通所系サービス「同一建物」の定義
    構造上または外形上の一体的な建築物で例えば、同じ建物の別フロアに事業所がある場合や、渡り廊下などで繋がっている建物が該当します。
  • 訪問系サービス「同一敷地内建物等」の定義
    同一敷地内または隣接する敷地にある建物で、効率的なサービス提供が可能な場合に限ります。同一敷地内の別棟の建物や、幅の狭い道路を挟んで隣接する建物も含まれます。

ただし、広大な敷地に複数の建物が点在している場合や、幹線道路や河川などで敷地が隔てられている場合など、サービス提供の効率化につながらない場合は減算の対象とはならないこともあります。

令和6年介護報酬改定での見直し

令和6年介護報酬改定での見直しと適用条件

令和6年介護報酬改定では 訪問介護における算定要件の見直しと、 居宅介護支援事業所が新たに適用の対象となりました。

■訪問介護

厚生労働省は、訪問介護の同一建物減算を見直す際に以下の理由を挙げています。

「同一建物等居住者へのサービス提供割合が多くなるにつれて、訪問件数は増加し、移動時間移動距離は短くなっている実態を踏まえ、同一建物減算について、事業所の利用者のうち、一定割合以上が同一
建物等に居住する者への提供である場合に、報酬の適正化を行う新たな区分を設け、更に見直しを行う」と述べています。

減算の内容算定要件
①10%減算事業所と同一敷地内建物等に居住する利用者にサービスを提供する場合
(②およびは除く)
②15%減算同一敷地内建物の利用者が1か月あたり50人以上の場合
③10%減算上記①以外の範囲に所在する建物に、1か月あたり利用者20人以上居住する場合
④【新設】12%減算正当な理由なく、事業所において、前6か月間に提供した訪問介護サービスの提供総数のうち、同一敷地内又は隣接する敷地内に所在する建物に居住する者に提供されたものの占める割合が100分の90以上である場合

※①~③は訪問系サービスに適用され、④は訪問介護だけに適用される減算になります。

■居宅介護支援事業所

減算の要件
以下のいずれかに該当する場合、5%減算となります。

  1. 事業所の所在する建物と同一の建物、同一の敷地内の建物、隣接する敷地内の建物に住む利用者に対して5%減算
  2. 1か月あたり20人以上が利用する建物(上記を除く)に住む利用者に対して5%減算

 

同一建物減算の適用期間について(厚生労働省QAより抜粋)

  • 令和6年度 
    <後期>
    ・判定期間:令和6年 10 月~令和7年2月末日
    ・減算適用期間:令和7年度4月1日~9月 30 日

  • 令和7年度以降
    <前期>
    ・判定期間が前期:3月1日~8月 31 日
    ・減算適用期間: 10 月1日~3月 31 日

    <後期>
    ・判定期間:9月1日~2月末日
    ・減算適用期間:4月1日~9月 30 日

出展:厚生労働省|令和6年度介護報酬改定における改定事項について

今後の法改正による影響

「囲い込み問題」行政による監視強化

厚生労働省は囲い込み問題の改善が進んでいないと認識しており、自治体に対して実地指導の徹底を推進しています。今後、監視体制がさらに強化されるでしょう。

すでに一部の自治体では、積極的な実地指導が開始されており、具体的には訪問介護等の事業所を経由せずに入居施設に直行直帰している介護職員の現場を確認し、その場で指導を行うケースがあるようです。

訪問系サービスの次期改定のゆくえ

厚生労働省は2025年1月下旬、2025年度の介護事業経営概況調査の実施内容を発表しました。この調査では、次期介護報酬改定に向けた基礎資料を得ることを目的としています。

今回の調査では、訪問系サービス事業所を対象に、延べ訪問回数に占めるサ高住や特養、有料老人ホームへの訪問割合の他、訪問の移動手段・時間についての項目を追加する方針を示しました。

この項目が設けられる背景として、令和6年度介護報酬改定に向けた調査の際、個々の自宅を訪問する事業所とサ高住へ訪問する事業所を区別せずに調査を行ったため、給付費分科会や利用者側の委員から、訪問の割合を区別した収支を見るよう求める意見が出ていました。

しかし、令和6年度の改定では訪問介護の基本報酬が一律に引き下げられ、訪問介護事業者から強い批判が寄せられました。今回の調査では、これらの経緯を踏まえ、より詳細な情報収集を行い、次期介護報酬改定に反映させる意図が伺えます。

また訪問介護では、同一建物等の居住者へのサービス提供割合が高くなるほど、訪問件数は増加するものの、移動時間や距離が短縮される実態が明らかになっており、次期介護報酬改定においては、訪問系サービスに対してさらに厳しい改定につながる可能性が高いと予想されます。

さいごに

囲い込み問題と同一建物減算は、介護サービスの質と公平性を確保するための重要な課題です。行政による監視強化や介護報酬改定を通じて、これらの問題に対する取り組みが進められていますが、介護事業者にとっては経営面での影響も大きくなっています。

特に訪問介護事業所では、次期介護報酬改定に向けてさらなる厳しい対応が予想されることから、事業の継続や拡大に課題を感じている事業者も少なくないでしょう。

今後の経営課題の解決策の一つとして、M&A(売却・買収)も選択肢として考えられます。M&Aを通じて経営基盤を強化し、スケールメリットを活かした効率的な運営や、サービスの質の向上を図ることができる可能性があります。

当社では譲渡、譲受に関するご相談を無料で承っております。介護業界のM&Aに関する豊富な経験と専門知識を有しておりますので、経営課題の解決や事業戦略の見直しをお考えの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

 

無料で相談したい