M&A仲介業者選びで防ぐM&Aトラブル

はじめに

近年、企業の合併・買収(M&A)が活発化する中、M&A仲介会社の役割がますます重要になっています。しかし、その一方で、仲介会社とのトラブルも増加しており、価格の過小評価、過大評価や秘密保持契約の不備などが問題視されています。

なかでも最近新聞やニュースにも取り上げられ問題となったのが、悪質な買手企業による資金目的のM&Aです。これらのトラブルをめぐっては、M&A仲介会社の責任を問う声も上がっており、適切な審査や情報提供が行われていなかったのではないかという指摘もあります。悪質な買手によるM&Aは、売却企業にとって深刻な影響を及ぼします。

本コラムでは、M&A仲介会社を利用するメリット・デメリット、よくあるトラブル、それらを回避するためのポイントや信頼できる仲介会社の選び方について解説します。

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M&A仲介会社とは?

役割とサポート内容

M&A仲介会社は、企業の買収や売却のプロセスをサポートする専門機関です。

通常、M&A仲介会社は交渉の仲介、デューデリジェンスの実施、契約書の作成など、M&Aプロセスの重要な場面で全面的に企業のサポートを行います。特に、M&Aは多くの法的、金融的、組織的な要素を含むため、専門的な知識と経験が必要不可欠です。M&A仲介会社を活用することで、経験不足や情報不足を補い、M&Aを円滑に進めることができます。特に中堅・中小企業のM&Aにおいては、複雑な手続きを一貫してサポートしてくれるM&A仲介会社の存在が、成功への大きな要因となります。

M&A仲介会社の種類と特徴

M&A仲介会社には、業界に特化した専門的な会社と、広範囲にわたるM&Aを扱う仲介会社があります。例えば、当社のように医療・介護・福祉業界に特化した仲介会社もあれば、業界を限定せずに大規模なM&Aを得意とする仲介会社も存在します。それぞれの仲介会社には得意分野があるため、自社のニーズに最も適した会社を選ぶことが重要です。

どのような企業が利用するのか

M&A仲介会社を利用する企業は、一般的には中堅や中小企業が多いでしょう。理由として大企業よりM&Aの経験が少ないことや、社内にM&A専門の部署や人材がいないことから、仲介会社のようにM&Aの複雑なプロセスを一貫してサポートしてくれる存在が必要となるからです。

またM&A仲介会社を利用する目的としては、売却を検討している企業であれば、後継者不在の問題を抱えている企業や、業績不振で再建を目指す企業、成長の限界を感じている企業などが多いでしょう。

買収を検討する企業であれば、新規事業への参入を狙う企業、既存事業の拡大を目指す企業、既存事業とのシナジー効果を求める企業などがあげられるでしょう。

仲介会社を通したM&Aと直接取引は何が違うか?

M&A仲介会社を利用する場合は、専門家による全面的なサポートと適切なアドバイスを受けられます。複雑なM&Aプロセスを円滑に進行でき、適正な企業価値評価や相場感の把握が可能です。また、中立的な立場の仲介者が双方の意見を調整するため、感情的になりにくく、円滑なコミュニケーションが図りやすくなります。仲介会社の幅広いネットワークを活用して効率的に相手先を見つけられる点も、仲介会社を利用する大きなメリットでしょう。

直接取引の場合は仲介手数料を節約できますが、専門知識の不足や適正相場がわからないというリスクがあります。また、利害関係が対立しやすく交渉が難航する可能性や、発言内容により信頼関係を損なうリスクもあります。相手先の選定も自社のネットワークや公開情報に頼ることになり、選択肢が限られる可能性があります。

一方でM&A仲介会社の利用には仲介手数料がかかりますが、専門家のサポートにより効率的にプロセスを進められます。直接取引では仲介手数料は不要ですが、交渉の難航や知識不足により時間がかかる可能性があります。
特にM&A経験の少ない中小企業にとっては、M&A仲介会社を利用することで、より安全かつ効果的にM&Aを進めることができるでしょう。

M&A仲介会社を利用するメリットとデメリット

●M&A仲介会社を利用するメリット

専門家によるサポート

M&Aに関する広範囲な事項について、専門的なアドバイスやサポートを受けることができます。専門家によるサポートは、M&Aプロセス全体を通じて多岐にわたります。

まず、M&Aのプロセスや戦略に関する専門的な助言を提供し、業界特有の課題やリスクの評価と対処法を提案します。企業価値評価においては、財務指標だけでなく業界特有の要素を考慮した適切な算定を行います。

法的サポートとしては、契約書や覚書の作成支援、法的手続きのガイダンス、関連法規への対応をサポートします。リスク管理面では、潜在的な問題点の洗い出しやコンプライアンスリスクの評価と対策などを行います。

交渉においては、価格交渉や契約条件の調整で中立的な立場から仲介し、冷静で客観的な交渉を促進します。デューデリジェンスでは、必要書類やデータの整備をサポートし、結果の分析と対応策を提案します。

また、複雑なM&Aプロセス全体の適切なスケジュール管理を行い、幅広いネットワークを活用して最適な候補先の選定をサポートします。

これらの専門的なサポートにより、M&A経験の少ない企業でも、効率的かつ効果的にM&Aを進めることが可能になります。特に中小企業のM&Aにおいて、これらの専門的サポートは非常に重要な役割を果たし、M&Aを成功に導くための手段となるでしょう。

適正なマッチングの実現

M&A仲介会社は幅広いネットワークと専門的な知識を活用し、効率的に最適な候補企業を見つけ出します。多数の候補から相手を探すことができ、業界や企業の特性を理解した上で、シナジーが見込める企業を選定します。また、売り手・買い手双方にとって納得感の高い相手先を探すことで、成功の可能性を高めます。

交渉の効率化

M&A仲介会社は中立的な立場で双方の主張を調整し、円滑なコミュニケーションを実現します。専門的な知識と経験を活かしたサポートにより、効率的な交渉を進めることができます。複雑なM&Aプロセスの適切なスケジュール管理や、リスクの把握と対策も行います。さらに、通常業務と並行してM&Aを進める企業の労力を軽減することで、効率的な交渉を可能にします。

情報管理と法的リスクの軽減

M&Aでは機密情報や財務データが扱われるため、M&A仲介会社は厳格な情報管理体制を持っています。具体的には、情報の取り扱いに関するプロトコルを設け、必要最小限の関係者にのみ情報を開示します。また、秘密保持契約を締結し、情報開示のタイミングを慎重に管理することで、情報漏洩のリスクを最小限に抑えます。M&A仲介会社は買い手と売り手の間に立ち、双方の情報を適切にコントロールし、交渉を円滑に進めます。

またM&Aには複雑な法的側面があり、適切に対処しないと問題が発生する可能性があります。M&A仲介会社は法務の専門家と連携し、法的リスクを最小限に抑えるようにサポートします。契約書や覚書の作成支援や法的手続きのガイダンスを行い、独占禁止法や労働法など関連法規への対応も行います。デューデリジェンスでは法的問題点を洗い出し、適切な対応策を提案することで、取引後の予期せぬ法的問題を軽減します。

時間と労力の節約

M&Aプロセスは複雑で、多くの手続きや交渉が必要です。直接取引で売却・買収を進めるとなると、通常の業務を行いながら、候補先企業の探索や交渉を進めることになり、大きな負担がかかります。しかし、M&A仲介会社を利用することで、候補先の選定から交渉、成約までの工程を専門家が代行します。これにより、企業はM&Aにかかる労力を軽減し、本業に集中できる環境が整います。さらに、M&A仲介会社は豊富なネットワークを活用して、効率的に相手先を見つけ出し、比較的短期間でのM&A成立を実現します。このように、M&A仲介会社を利用することで、時間と労力を大幅に削減できる点が大きなメリットでしょう。

●M&A仲介会社を利用するデメリット

手数料の負担

M&A仲介会社の利用には高額な手数料がかかります。これは固定報酬と成功報酬の組み合わせが一般的で、特に成功報酬は取引額の数%になることもあり、企業にとって大きな財務的負担となる可能性があります。特に中小企業にとっては重荷になることがあるでしょう。

情報漏洩のリスク

M&Aでは機密性の高い情報を扱うため、適切な情報管理体制が整っていないM&A仲介会社へ依頼した場合、競争上の不利益や取引の中断につながる恐れがあります。

意思決定の複雑化

M&A仲介会社が介入することで、意思決定プロセスが複雑になる可能性があります。直接取引に比べて関係者が増えるため、合意形成に時間がかかったり、意思疎通に齟齬が生じたりする可能性があります。

相手企業の選択肢が制限される可能性

M&A仲介会社のネットワークや提案に依存することで、潜在的な相手企業の選択肢が限定される可能性があります。M&A仲介会社の持つ情報や関係性に偏りがある場合、最適な相手を見逃す恐れがあります。

利益相反のリスク

なかには成功報酬を得るために取引の成立を優先するM&A仲介会社が存在し、必ずしもクライアント企業の最善の利益を追求しない場合があります。このような利益相反は、取引条件の不利な設定や不適切な相手企業の選定につながる可能性があります。

M&A仲介会社との間でよくあるトラブルとその回避方法

近年、M&A仲介会社に関するトラブルや悪質な事例が増えています。M&A仲介業界に対する規制が十分ではなく、M&A仲介には特別な資格が必要ないため、悪質な業者が参入し、トラブルが増加しています。M&A仲介会社との間でよくあるトラブルは次の通りです。

不適切な買い手企業の紹介

M&A仲介会社が買い手企業の財務状況や経営方針などを十分に審査せず、問題のある企業を売手に紹介しているケースです。また、売手企業に対し、買手企業の問題点や潜在的なリスクを適切に開示していない事例も報告されています。これらは、M&A仲介会社の責任問題として指摘されています。

最近ニュースなどでも大きく取り上げられましたが、悪質な買手企業が、買収後すぐに売手企業の現金を吸い上げ、経営に関与せず放置するなどの行為を繰り返すことで、従業員への給与支払いや取引先への支払い、借入金返済などが滞る事件が発生しました。

これらの問題を受け、M&A仲介協会は悪質な買い手企業を登録する「特定事業者リスト」の運用を開始し、中小企業庁も「中小M&Aガイドライン」を改訂するなどの対策を講じています。しかし、トラブルを完全に防ぐには至っておらず、M&A仲介業界の信頼回復が課題となっています。M&Aを検討する企業は、これらのリスクを認識し、仲介会社の選定に十分な注意を払う必要があります。複数の専門家の意見を聞き、契約内容を明確にし、デューデリジェンスを徹底するなど、慎重に進めることが重要です。

価格の過小評価または過大評価

M&Aにおいて、企業価値の適切な評価は非常に重要です。過小評価の場合、売手が不当に低い価格で会社を手放すリスクがあります。一方、過大評価では買手が高すぎる価格を支払う可能性があり、後々の経営に支障をきたす恐れがあります。これらは業界特有の価値要因を理解していないM&A仲介会社が、一般的な評価手法のみを適用することが起因しています。適切な価格設定のためには、複数のM&A仲介会社から意見を聞き、客観的な企業評価と市場動向を把握することや、業界に特化したM&A仲介会社の選定が不可欠です。

M&Aのプロセスの遅延

M&Aプロセスの遅延は、取引の失敗や機会損失につながる可能性があります。M&A仲介会社が適切にデューデリジェンスを管理・調整しない場合、必要以上に時間がかかったり、追加の調査が必要になったりして遅延が生じる可能性があります。またM&A仲介会社が適切に両者の利害を調整できない場合、価格や条件の交渉が長引き、プロセスが遅延する可能性があります。プロセスが長引くと、市場環境の変化などのリスクも高まります。適切なスケジュール管理と迅速な対応が求められます。

不透明な情報開示

M&A仲介会社による重要情報の隠蔽や誤った情報提供、過剰な情報開示による機密漏洩などが問題となっています。これにより、適切な価格設定や意思決定が困難になり、企業価値を損なう可能性があります。

コミュニケーション不足

M&Aアドバイザーのコミュニケーション不足は、売り手と買い手の間の情報伝達が適切に行われないことで生じます。重要情報の伝達漏れや虚偽の情報伝達、意図的な情報の秘匿などが起こり、取引の円滑な進行を妨げる要因となってしまいます。

法的・規制上の問題への対応不足

M&A仲介業界における規制の不足と法務専門家の不在は、深刻な問題を引き起こしています。この状況下で、法的リスクの見落としや重要な法的手続きの不備、さらにはガイドラインへの不十分な対応が頻発し、取引完了後のトラブルに発展するケースが増加しています。これにより、問題解決に長時間を要したり、取引完了後に予期せぬ法的問題が発覚したりするリスクが高まっています。さらに、このような状況はコンプライアンス違反や法的責任の発生につながる可能性もあります。

M&A仲介会社とのトラブルを回避するためには

契約内容の事前確認

M&A仲介会社との契約書の内容を詳細に確認し、手数料の内訳や支払い条件、サービスの範囲を明確にします。不明瞭な費用や条件がないか慎重にチェックし、必要に応じて交渉や修正を行います。すべての重要事項が契約書に明記されていることを確認し、後々のトラブルを防ぎます。

信頼できるM&A仲介会社の選定

実績、専門知識、ネットワークの広さ、手数料の透明性、コミュニケーション能力などを総合的に評価し、信頼できるM&A仲介会社を選びます。過去の取引実績や顧客評価を調査し、自社の業界や規模に適した経験を持つM&A仲介会社を選定することが重要です。

透明性のある情報共有

M&A仲介会社との間で常にオープンなコミュニケーションを維持し、重要な情報を適時に共有します。進捗状況や課題、リスクなどについて、明確かつ正確な情報交換を行い、双方の理解が一致していることを確認します。情報の隠蔽や誤解がトラブルの原因となるため、透明性を保つことが重要です。

法務専門家の活用

M&Aプロセスの各段階で、必要に応じて弁護士などの法務専門家のアドバイスを受けます。契約書のレビュー、法的リスクの評価、規制対応などについて、専門家の意見を取り入れることで、法的なトラブルを回避し、取引の安全性を高めることができます。

中立性の確保と確認ポイント

M&A仲介会社は必ずしも中立的な存在ではないことを認識しておくことが重要です。M&A仲介会社がどちらか一方の利益を優先することがないよう、中立性を確保するためのチェックポイントを確認しておく必要があります。例えば、契約書に中立性に関する条項を含める、複数のM&A仲介会社と話をするなどの対策が考えられます。

M&A仲介会社を選ぶ際のポイント

では実際にM&A仲介会社を選定する際、どのようなポイントに気をつければよいのでしょうか?

●専門分野や得意分野を確認する

M&A仲介会社を選ぶ際には、まずその会社がどの業界に特化しているか、どのような分野で強みを持っているかを確認することが重要です。これらはM&A仲介会社のウェブサイトから過去の成約実績、得意分野を確認することができるでしょう。特に、自社と同規模・同業種のM&Aを多く手掛けている仲介会社は、類似するケースでの成功経験が豊富であるため、信頼性が高いといえます。

その分野に特化したM&A仲介会社を選んだほうが良いケースとして、例えば医療・介護業界では、事業運営に必要な許認可や資格が多数存在します。業界特化のM&A仲介会社であれば、これらの許認可や資格の移転に関する複雑な手続きをサポートし、スムーズな事業継承が実現できるでしょう。また医療・介護業界では、一般的な財務指標だけでなく、患者数や介護度、スタッフの質など、独自の要素が企業価値に大きく影響するため、業界特性を理解していることで、これらの要素を適切に評価し、公正な企業価値を算定することができます。

●「アドバイザー」選びも重要

M&Aプロセスを円滑に進めるためには、適切なアドバイザーを選ぶ必要があります。まずはアドバイザーの経験と実績を確認しましょう。自社と同規模・同業界のM&A案件の経験があるか、過去の成功事例を具体的に聞くことで、その能力を判断できます。また、M&Aに関する法務、財務、税務などの専門知識や、業界特有の知識、最新動向への精通度も重要な選定基準となります。

そしてコミュニケーション能力も見逃せないポイントです。複雑なM&Aプロセスを分かりやすく説明でき、クライアントの要望や懸念を適切に理解し対応できるアドバイザーを選ぶべきでしょう。さらに、誠実で信頼できる人柄か、クライアントの最善の利益を追求する姿勢があるかも重要な判断基準です。
また他の専門家(弁護士、会計士など)と円滑に連携できるチームワーク力や、特定の企業や業界との利害関係の有無も確認が必要です。無料相談などを活用して直接会って話をし、複数のアドバイザーと面談して比較検討することもおすすめです。

●サービス内容

M&A仲介会社を選ぶ際は、提供されるサービスの範囲にも注意を払うことが重要です。M&A仲介会社によって、そのサポート内容は大きく異なります。
一部の会社は単純な買い手と売り手のマッチングのみを行いますが、これはM&Aの複雑なプロセスを考えると十分とは言えません。M&Aには専門的な知識と経験を要する多くの手続きが含まれるため、より包括的なサポートが望ましいでしょう。理想的なM&A仲介会社は、少なくともデューデリジェンスやトップ面談に関するアドバイスを提供できる能力を持っているべきです。さらに、契約書の作成代行まで行ってくれる会社であれば、より安心してM&Aプロセスを進めることができます。したがって、M&A仲介会社を選定する際は、単なるマッチングサービス以上のものを求め、デューデリジェンス、トップ面談のアドバイス、さらには契約書作成のサポートまで提供できる会社を優先的に検討することをおすすめします。

●仲介手数料の発生タイミングと金額

M&A仲介会社を利用する際には、仲介手数料の種類とその内容を事前に確認しておくことが重要です。各手数料の具体的な金額や支払い条件を明確にしておくことで、予期せぬ費用の発生を防ぐことができます

まず手数料についての確認ポイントとしては大きくは4つあります。

  1. 仲介手数料の種類
  2. 成功報酬の計算方法
  3. 返金条件
  4. 実費の範囲

■1.仲介手数料の種類

  • 事前相談料:多くの場合は無料ですが、事前に料金を確認しておくことが重要
  • 着手金:成立しなくても返金されないため注意が必要
  • 中間金:成立しなくても返金されない場合が多い
  • 成功報酬:最終契約締結後に発生し、取引金額に応じて変動する
  • 実費:出張費用や弁護士費用などの経費で、着手金や成功報酬に含まれているか確認が必要
  • リテーナーフィー(月額報酬):不要な場合もあるため、必要性を確認
  • デューデリジェンス費用:専門家への報酬

各費用の具体的な金額と支払いタイミングを事前に確認し、全体の費用計画を立てましょう。

■2.成功報酬の計算方法

一般的にレーマン方式が用いられます。レーマン方式とは簡単に言うと、M&Aの取引金額に応じて段階的に報酬率を変える計算方式のことです。

基本的な計算式は「成功報酬 = 報酬基準額 × 報酬率」です。

報酬基準額の算出方法には主に以下の3種類があります

  1. 株式価値基準:株式の譲渡価額
  2. 企業価値基準:株式価値 + 有利子負債
  3. 移動総資産基準:のれん(営業権) + 総資産

レーマン方式は取引規模に応じて報酬が変動するため、小規模から大規模までの様々なM&A案件に対応でき、公平な報酬計算がであることから、広く採用されています。この方式を使うことで、M&Aの規模に応じた適切な報酬設定が可能となり、依頼者(売り手・買い手)とM&A仲介会社の双方にとって納得感のある報酬体系を実現できます。M&A仲介会社によって最低報酬額の有無はことなりますので、あらかじめ金額を確認しておきましょう。

■3.返金条件

通常、着手金や中間金はM&Aが不成立でも返金されないケースが多いです。返金条件がある場合は、その詳細を契約書で確認することが重要です。

  • 中間金:多くの場合、不成立でも返金されない
  • 成功報酬:M&A成立後の支払いのため、返金の問題は通常発生しない

■4.実費の範囲

  • 出張費用、交通費、宿泊費
  • 資料作成費、印刷代
  • 弁護士や会計士などの専門家への報酬
  • デューデリジェンス費用(通常200〜300万円程度)

実費の範囲と上限額、事前承認の要否などを確認し、予期せぬ出費を避けることが大切です。

●大手M&A仲介会社だけを選ぶリスク

大手M&A仲介会社を選ぶことは一見すると安心感がありますが、必ずしも最適な選択とは言えません。大手だからといって、自社のニーズに最も適したサポートを提供してくれるとは限りません。

大手M&A仲介会社は一般的に手数料が高額なケースが多く、中小企業のM&Aでは割高になる可能性があります。また、多数の案件を扱うため、個別のニーズや状況に柔軟に対応できないことがあります。経験の浅い担当者が案件を担当する可能性や、大規模案件を優先するあまり中小企業の案件が後回しにされるリスクもあります。さらに、特定の業界に特化した知識や地域密着型の情報が不足している場合もあります。標準化されたプロセスを重視するあまり、個別案件の特性に応じた柔軟な対応が難しいこともあります。これらのリスクを考慮し、企業規模や業界、地域性などを踏まえて、大手だけでなく専門性の高い中小M&A仲介会社も含めて比較検討することが最適といえるでしょう。

さいごに

M&A取引は企業の将来を大きく左右する重要な意思決定です。適切なM&A仲介業者を選ぶことで、多くのトラブルを未然に防ぎ、成功への道を開くことができます。

当社CBパートナーズは医療・介護・福祉業界専門のM&A仲介会社です。売却・買収に関してご不明点やご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

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