令和6年度の診療報酬改定では医療DXに関する評価が重点的に盛り込まれ、
電子処方箋の体制整備・電子カルテ情報共有サービスへの参加や、オンライン資格確認等システムで得られる診療情報・薬剤情報の取得・活用などがありました。
その中で新設された「医療DX推進体制整備加算」が2024年10月から、マイナ保険証の利用率に応じて3区分に分けられます。
本コラムでは、加算の具体的な見直し内容や、2024年12月から紙の健康保険証の新規発行が停止されることを踏まえ見直されることになった「医療情報取得加算」などについて最新情報を解説していきます。
※2024年9月時点での情報です
「医療DX推進体制整備加算」は医療DXに対応する体制を確保していることを評価する加算で、令和6年度の診療報酬改定で新設されました。
この加算ではオンライン資格確認により取得した診療情報・薬剤情報を、実際に診療に活用できる体制を整備していること、また電子処方箋及び電子カルテ情報共有サービスを導入し、
質の高い医療を提供するための体制を確保している場合を評価します。
>>>電子カルテ情報共有サービスについてはこちらのコラムで詳しく解説しています。
2024年6~9月までの医療DX推進体制整備加算の点数は以下の通りです。
種別 | 点数 | 加算要件 |
医科 | 8点 | 初診時に1回 |
歯科 | 6点 | 初診時に1回 |
2024年10月からは以下の3区分に分かれ、マイナ保険証の利用率(案)によって点数が変わります。
さらに1月以降には利用率の基準が高くなります。2025年4月以降の利用率は、年内をめどに検討するとされています。
種別 |
加算区分 |
点数 | マイナ保険証の利用率 2024年10月~12月 | 2025年1月~ | |
医療 | 加算1 | 11点 | 15%以上 | 30%以上 |
加算2 | 10点 | 10%以上 | 20%以上 | |
加算3 | 8点 | 5%以上 | 10%以上 | |
歯科 | 加算1 | 9点 | 15%以上 | 30%以上 |
加算2 | 8点 | 10%以上 | 20%以上 | |
加算3 | 6点 | 5%以上 | 10%以上 |
各医療機関におけるマイナ保険証利用率の考え方として、適用時期の3カ月前のレセプト件数ベースのマイナ保険証利用率を用いることを基本とします。
しかし2024年10月~2025年1月までの間については、適用時期の2カ月前のオンライン資格確認件数ベースのマイナ保険証利用率を用いることを可能としています。
出典:厚生労働省|医療DX推進体制整備加算・医療情報取得加算の見直しについて
加算1と加算2を算定するためには、「マイナポータルの医療情報等に基づき、患者からの健康管理に係る相談に応じること」という新たな条件を満たす必要があります。
そのほかの施設基準(医科医療機関)は以下の通りです。
マイナ保険証利用率に関する施設基準については、毎月社会保険診療報酬支払基金から報告されるマイナ保険証利用率が当該基準を満たしていればよく、特に地方厚生(支)局長への届出を行う必要はないこととされています。
またすでに医療DX推進体制整備加算の施設基準を届け出ている保険医療機関・薬局は、届出直しは不要ですが、すでに施設基準を届け出た保険医療機関・薬局において、マイナ保険証利用率要件が基準に満たない場合には、加算を算定できないとなっているため注意が必要です。
医療情報取得加算は、かつて「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」として2023年4月から原則義務化された、オンライン資格確認についての体制整備を評価する加算でしたが、令和6年度診療報酬改定で「医療情報取得加算」へと名称が変更され、初診時などで診療情報の取得・活用について評価する加算として新設されました。
医療情報取得加算も2024年12月から点数が見直されます。
2024年6月~11月までの加算点数は以下の通りです。
初診時 | 医療情報所得加算1(現行の保険証の場合) | 3点 |
医療情報取得加算2(マイナ保険証の場合) | 1点 |
再診時 | 医療情報取得加算3(現行の保険証の場合) | 2点 |
医療情報取得加算4(マイナ保険証の場合) | 1点 |
初診時 | 医療情報取得加算 | 1点 |
再診時(3ケ月に1回限り算定) | 医療情報取得加算 | 1点 |
12月から健康保険証の新規発行が廃止となり、マイナンバーカードと保険証の一体化が進むことから、加算区分がなくなり初診時、再診時ともに「1点」に統一となりました。
出典:厚生労働省|医療DX推進体制整備加算・医療情報取得加算の見直しについて
2024年12月からは紙の保険証が廃止されますが、2024年7月現在のマイナ保険証利用率は11.3%と普及率は低い状況です。
マイナ保険証の利用率が低い理由として、個人情報漏洩や紛失のリスクを懸念する声や、マイナ保険証がないと医療機関を受診できないという誤解が広がっていることもあるようです。
また医療機関側の課題としては、カードリーダーの読み取りエラーなど技術的なトラブルが起きていることや、国側から利用率の低い医療機関に対して、個別アプローチで利用を促すなど、医療機関へ圧力をかけられていること、利用促進のための患者への対応に負担を感じていることも考えられます。
そもそもマイナ保険証の利用は任意であり、普及策には強引さも感じられることから、国民や医療機関の理解や準備が十分でない状況ではないでしょうか。
出典:厚生労働省|マイナ保険証の利用促進等について
今や医療DXの進展は医療機関の経営環境を大きく変える要因です。単なる業務効率化だけでなく経営戦略の一環として捉え、長期的な視点で取り組むことが重要です。
一方でマイナ保険証対応や電子カルテの導入など、DX推進のためには設備投資負担が増加します。今後、医療DXに対応できる資金力や人材を持つ医療機関と、そうでない医療機関との間で経営格差がますます広がっていくのではないでしょうか。
そのため、DXに対応できない医療機関からDX推進が得意な医療機関への事業承継が増えるのではないかと考えられます。
もし加速するDX化でお悩みの場合は、将来を見据え医療機関を地域に残すための手段として、事業承継を選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。
まずはお話しを聞くだけでも構いません。
気になることがございましたら、お気軽にお問い合わせください。