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サービス付き高齢者向け住宅と有料老人ホームの違い

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訪問介護

はじめに

近年、介護事業の中でも人気があり、新規参入する企業が増加中の「サービス付き高齢者向け住宅(以下、サ高住)」と「有料老人ホーム」との違いを解説していきます。CBパートナーズにも「新たに介護事業を始めたいから買収を検討している」とお問合せをいただくことが増えております。サ高住と有料老人ホームはどちらも人気の高齢者住宅ですが、対象者や入居時にかかる費用、受けられるサービスなどが異なります。
本コラムではサ高住と有料老人ホームの違いについて、それぞれの入居条件や費用、サービス内容などを詳しく解説していきます。

有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅の違い

まず有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅を・区分基準・サービス内容 ・入居条件 ・費用面 ・契約方式 ・医療サポート ・見守り体制 ・生活の自由度の8つの側面から比較していきます。 
区分基準・サービス内容の違い

有料老人ホーム
有料老人ホームは自立した生活が可能な高齢者から介護度の高い高齢者を対象とし、
「食事」「介護」「家事」「健康管理」のうち、いずれかのサービスを1つ以上提供している施設のことです。有料老人ホームは「介護付き有料老人ホーム」「住宅型有料老人ホーム」「健康型有料老人ホーム」の3種類に分かれ、入居者の状況やニーズに応じてサービス内容や料金も様々です。後程解説します。

サービス付き高齢者向け住宅
対してサ高住は主に要介護度が高くない自立している高齢者を対象とした、
「安否確認・見守り」「生活相談」の2つのサービスを必ず受けることができるバリアフリー賃貸住宅のことです。外出などが自由にできるため有料老人ホームより自由度の高い生活を送れることが大きな特徴です。
またサ高住には「一般型」「介護型」の2種類あり、ほとんどのサ高住は「一般型」で、自立〜介護度の低い方を対象としており、介護サービスが必要となった場合は外部のサービスを利用することができます。「介護型」は厚生労働省が定めた「特定施設入居者生活介護」に指定されている施設で、要介護が高くても入居でき施設内の常駐スタッフから介護サービスを受けられる点が特徴です。

 

入居条件の違い

有料老人ホーム

  • 60歳以上または65歳以上で、要支援・要介護認定を受けている人
  • 自立・要支援・要介護
    ※「介護付き有料老人ホーム」「住宅型有料老人ホーム」「健康型有料老人ホーム」によって入居条件が異なるため、後程解説します。

サービス付き高齢者向け住宅

  • 原則60歳以上で一人で生活できる自立した高齢者
  • 特定疾病により40歳以上60歳未満で要支援又は要介護認定を受けている方

出典:厚生労働省 高齢者向け住まいについて 高齢者住まいの概要 

 

費用面の違い

有料老人ホーム
家賃などの支払い方式は、入居時に一括して終身の家賃等の費用の全部または一部を支払う前払い方式(入居一時金方式)」か「月払い方式」の2つの方式があり、さらに「併用方式」や2つから「選択する方式」もあります。

サービス付き高齢者向け住宅
サ高住の「一般型」と「介護型」で支払いの方式が異なります。
一般型に多い「月払い方式」では、家賃の2〜3ヶ月分を敷金として支払います。敷金がない場合はその分月額費用に上乗せされていることが多いです。
なお一般型で介護サービスを別途利用する場合、その分の費用が月々かかってきます。

介護型に多い「前払い方式」では、まとまった金額を入居時に支払います。その費用を毎月の家賃などに一定額ずつあてられるため、月払い方式と比べると月額費用は低くなります。月額費用については通常の賃貸住宅と同じように賃貸借契約を結んで家賃や管理費、共益費、水道光熱費、安否確認・生活相談の基本サービス費など定額費用を支払います。介護型では食事サービスの提供を前提に、水道・光熱費が含まれていることもあるため確認が必要です。

費用は施設ごとに異なりますが有料老人ホームに比べると、
サ高住の初期費用は総じて低額で多くの方が入居を考えやすいということです。

出典:厚生労働省 サービス提供体制のチェックポイント 支払い方式について

出典:厚生労働省 介護付有料老人ホーム(特定施設入居者生活介護) 費用は、どのくらいかかるのか

 

契約方式の違い

有料老人ホームとサ高住では、契約方式にも違いがあります。

  • 有料老人ホームは「利用権方式」
    利用権方式という契約方式では物件の所有権はなく居室や設備、サービスにかかる料金を支払います。賃貸借契約と異なり契約を相続することはできませんが、終身住み続けることは可能です。

厚生労働省の調査では有料老人ホームで「利用権方式」を選択している施設は、介護付き有料老人ホームで約8割、住宅型有料老人ホームで約6割です。そのほか建物賃貸借方式や終身建物地位貸借方式といった契約方式もありますが、それぞれ0.5割未満しか採用されていないため、利用権方式の方が一般的だといえます。

  • サービス付き高齢者向け住宅は「賃貸借契約方式」
    一般的な賃貸物件を借りる場合と同様の契約方式のことです。
    賃貸借契約は「建物賃貸借方式」と「終身建物賃貸借方式」に分類できます。

・建物賃貸借方式とは
契約を相続することが可能で、例えば夫が契約者で夫婦で入居契約した場合、仮に夫が亡くなっても妻に契約を引き継いでサ高住に住み続けることができます。

・終身建物賃貸借方式とは
契約者本人が死亡した時点でその契約は手続き不要で終了し、契約を配偶者などに相続することはできません。

出典:厚生労働省 介護を受けながら暮らす高齢者向け住まいについて 居住の権利形態

 

医療サポートの違い

有料老人ホーム
特に介護付き有料老人ホームにおいては、看護師や介護職員が常駐しており、医療行為や健康管理が日常的に行われます。入居者の健康状態を定期的にチェックし、必要に応じて医療的なサポートを提供する体制が整っています。具体的には、服薬管理やバイタルサインの確認、医師の指示に基づく医療行為(例:インスリン注射や胃ろうの管理)などが含まれます。また、看取り対応ができる施設も増えており、入居者が最期を迎える際のサポートも行います。

サービス付き高齢者向け住宅
サ高住は基本的に自立した生活を送る高齢者を対象としており、サ高住には常駐の医療スタッフがいないため、入居者が医療的な支援を必要とする場合は、主に外部の医療機関や訪問看護サービス利用する必要があります。ですがサ高住には緊急通報装置が設置されており、入居者が何らかのトラブルに遭遇した際に迅速にスタッフや医療機関に連絡できる仕組みが整っています。

 

見守り体制の違い

有料老人ホームは職員が駐在しており、人員配置基準が定められているため、手厚いサポートと24時間体制の見守りが特徴で、特に介護が必要な高齢者に適しています。一方、サービス付き高齢者向け住宅は、自立した生活を支援するための見守り体制が整っており、緊急時の対応に特化しています。このように、両者の見守り体制は、それぞれのサービスの目的や対象者に応じて異なります。

 

生活の自由度の違い

生活の自由度においては、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)が有料老人ホームよりも高いと言えます。サ高住では自由な外出や生活の選択ができる一方で、有料老人ホームはより規則的な生活が求められ、介護サービスが充実しているため、自由度には制限があります。入居者のニーズやライフスタイルに応じて、どちらの施設が適しているかを選ぶようにしましょう。

有料老人ホームの種類

有料老人ホームは「介護付き有料老人ホーム」「住宅型有料老人ホーム」「健康型有料老人ホーム」の3種類に分かれます。
入居条件や提供されるサービスなど施設によって異なるため、自分のニーズに合う施設なのかを確認するようにしましょう。

施設の規模による分類

厚生労働省の調査によると令和元年時点で、全国の有料老人ホーム14,118件のうち住宅型有料老人ホームが7割を占め、次に介護付き有料老人ホームは3割近く、健康型有料老人ホームは0.1%ほどでほとんどありません。
介護付き有料老人ホームと住宅型有料老人ホームを比べると、住宅型有料老人ホームの伸び率が高く、運営法人は株式会社が最も多く約半数となっています。これは介護付き有料老人ホームが総量規制の対象となっていることが理由と考えられます。(総量規制とは、それぞれ各市町村単位の施設で計画に基づき、年間で開設できる施設数・床数を制限していること)

出典:厚生労働省 特定施設入居者生活介護 高齢者向け住まいについて①(各サービス関係図)

特定の要件に特化した分類

~入居条件~

介護付き老人ホーム
介護付き老人ホームは65歳以上の高齢者を対象に、自立から要介護5まで幅広く受け入れているのが特徴で、大きく3種類に分けられます。

  • 介護専門型・・・要介護1~5限定、なかには要支援1以上で入居可能な施設もある
  • 混合型・・・自立・要支援・要介護のすべての人が利用可能、認知症でも入居可能な場合が多い
  • 自立型・・・自立している人限定※現在自立型の施設は少なく介護専用型か混合型の施設が多い

住宅型有料老人ホーム
住宅型有料老人ホームは入居条件が施設ごとに異なり一律で決まっていませんが、
多くの施設では60歳以上または65歳以上の自立~要介護の高齢者を対象としています。
住宅型有料老人ホームでは施設による介護サービスの提供がないため、
必要な場合は外部の介護事業所と契約してサービスを利用します。
施設によって独自の入居条件があるので入居を検討する際は事前の確認が必要です。

健康型有料老人ホーム
健康型有料老人ホームは60歳以上の自立している高齢者を対象としています。
軽度の要介護状態であれば外部サービスを利用することは可能ですが、
重度の介護が必要となったり認知症を発症した場合は退去する必要があり、
また看取りの受け入れは応じていないため、利用する期間やニーズがご自身とあっているかの確認が重要です。

出典:厚生労働省 高齢者向け住まいについて 有料老人ホームの概況【実態調査】

~サービスの種類~

・介護付き有料老人ホーム
介護付き有料老人ホームで提供されるサービスとして食事、洗濯、清掃、排せつや入浴等の身体介護、リハビリ、レクリエーションなどがあります。24時間介護スタッフが駐在しているので、緊急時にも対応することができます。施設ごとにリハビリやレクリエーションに力を入れていたり特色がみられます。

・住宅型有料老人ホーム
住宅型有料老人ホームで提供されるサービスとして食事の提供、掃除、洗濯、健康管理、緊急時の対応などがあります。自立や介護度が低い入居者が比較的多いため、入居者同士のコミュニケーションにつながるイベントやレクリエーションが豊富で、居室をはじめとする設備面が充実している場合が多くみられます。

・健康型有料老人ホーム
健康型有料老人ホームで提供されるサービスとして食事の提供、緊急時の対応などがあります。自立している高齢者が対象の施設のため、レクリエーションなどのイベントが盛んで娯楽設備が充実している施設も多く、高齢者が活発に生活できる環境です。

有料老人ホームの特徴

安全・安心の環境

施設選びにおいて立地も重要なポイントの一つです。入居者が安心して過ごせる環境かどうかは立地で決まるといっても過言ではありません。高齢になるにつれ、新しい環境よりも住み慣れた地域の方が暮らしやすく、子どもや親戚の家に近いと入居者も安心できます。
施設の費用には立地が影響し、土地の値段や家賃と同様、首都圏と地方では費用に違いがあるため、予算にあった施設を選ぶ際に立地の検討も必要です。

以下は、入居者が安心して生活するために欠かせない有料老人ホームの規模及び構造設備について定められている項目です。

  • 建築基準法に規定する耐火建築物又は準耐火建築物とする
  • 建築基準法、消防法等に定める事故や災害に対応する設備を十分設ける
  • 建物の配置及び構造は、日照、採光、換気等入居者の保健衛生について十分考慮されたものである
  • 建物の設計に当たっては、入居者の身体機能の低下や障害が生じた場合にも対応できるよう配慮する
  • 一般居室、介護居室、一時介護室のいずれかを設ける
  • 浴室、洗面設備、便所について居室内に設置しない場合、すべての入居者が利用できるように適当な規模および数を設ける
  • 浴室・便所のバリアフリー化、緊急通報装置の設置
  • 提供するサービスに応じ共同利用の設備を設ける(食堂、医務室、看護・介護職員質、機能訓練室、談話室、洗濯室、汚物処理室、健康・生きがい施設など)
  • 居室は個室で1人当たり床面積が13㎡以上である
  • 廊下幅が原則1.8m以上(片廊下の場合)

出典:厚生労働省「​​​​有料老人ホームの設置運営標準指導指針について」

介護サービスの提供

介護付き有料老人ホームでは介護サービスの提供体制が整っており、入居者は手厚いケアを受けられます。住宅型有料老人ホームと健康型有料老人ホームでは介護サービスの提供がないため介護サービスが必要な場合は、外部の事業所と契約してサービスを利用することになります。入居先の施設を終身利用するなら、先の状況変化を考慮してサービス内容等を確認しておく必要があります。

生活の質の向上

生活の質は「QOL(Quality of life)」といわれ、生きる上での満足度をあらわす指標のひとつです。介護施設におけるQOLの向上は「入居者が満足のいく日常生活を送り、心身ともに健康な状態」を指します。たとえば提供される食事では盛り付け、彩り、味付けが良く、季節感にそった食事はQOLを高める食事だといえます。また生きがいや楽しみを見つけ充実した余暇時間を過ごすことも、QOL向上に大きくつながるため施設でのイベントやレクリエーションも重要です。

介護サービスを利用している高齢者は病気や障がいなどによってすでにQOLが低下している可能性が高く、過度に介護してしまうとかえってQOLを低下させてしまう恐れがあります。
自分らしく満足のいく暮らしができるように、入居者の希望に寄り添いながら日常生活を手助けすることが施設の役割ではないでしょうか。

サービス付き高齢者向け住宅の特徴

サービス内容の充実

サ高住の基本サービスは常駐スタッフによる生活相談サービス・安否確認サービスで、この2つは必ず受けることができるサービスです。

  • 安否確認サービス
    施設職員が、利用者の部屋を定期的に巡回し、訪問してくれるサービスです。
    時間や頻度は施設ごとに異なりますが、何か異変が起こったときには対応してくれるので入居者も家族も安心です。
  • 生活相談サービス
    専門家が生活の相談に乗ってくれるサービスです。

生活支援サービスなどがある施設
サ高住のなかには食事提供のサービスを実施している施設もあります。
カロリー計算が行われている食事のため、ご飯の用意が難しいときは安心して施設の食事を食べることができます。ほかには買い物の代行や付き添い、病院への送迎など、清掃、洗濯などの生活支援サービスが提供されることもあります。
また緊急時に施設職員の駆け付け対応、災害発生時の避難サポートを受けられます。一般型のサ高住で介護サービスを利用する場合、外部の介護保険サービスと契約する必要があり、
館内に訪問介護事業所や通所介護事業所が併設されていたり、外部の事業者と提携しているケースが多くみられます。

住環境の利便性

サ高住の登録基準として以下があげられます。

  • 各専用部分の床面積は、原則25㎡以上
    (リビングやキッチン、食堂など複数の居住者で共同利用できる場合は18㎡以上であればよい)
  • 各専用部分に、原則台所・水洗便所・収納設備・洗面設備・浴室を備えたもの
  • バリアフリー構造
  • ケアの専門家が少なくとも日中建物に常駐し、状況把握(安否確認)サービスと生活相談サービスを提供すること
  • 常駐しない夜間の時間帯は、緊急通報システムにより対応すること

出典 厚生労働省:「サービス付き高齢者向け住宅について」

サ高住は居室にキッチンや浴室があり、外泊や外出も自由にできるため
一般的な住宅同様の生活ができます。どのような体の状態においても「自分のペースで自由な生活をしたい」と考える人に適しているでしょう。サ高住の立地についてはご家族から近く周辺に役所や病院、公共施設などがあると生活しやすいでしょう。

どちらを選ぶべきか

各ホームによって高齢者のニーズに対応し、様々なサービスがあります。
設備面やその他のサービスなども含めて多角的に検討し、より良い施設を選ぶ必要があります。

個々の要件を考慮する

介護サービスの点から比較すると、サ高住でも介護サービスに力を入れている施設が増えていますが、介護度が上がると退去しなければならなかったり追加で介護サービスを契約する必要があったりする場合があります。長期的な目で見ると要介護が高い場合は有料老人ホームが安心でしょう。
ただし介護付き有料老人ホームは外部の介護サービスには保険適用されませんので注意が必要です。終身にわたって利用する場合などは、現在介護が必要なくても入居後の体調の変化を考えて、介護サービスの体制が整っているか事前に確認をしておいてもよいでしょう。

費用面を比較する

有料老人ホームと比べると、サ高住は初期費用がかなり安くまとまったお金を用意するのが難しい方に向いています。有料老人ホームは入居時にまとまった金額の支払いが必要なので初期費用はかかりますが、支払った金額を毎月の家賃などに一定額ずつあてられるため、長期的に住み続けたいと思っている方におすすめです。
ただ逆に短期間で退去する場合は、トータルで考えたときに月払い方式の方が安い可能性もありますので、入居時の年齢や体調、期間をふまえ、選ぶ必要があります。

まとめ

有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅の違いについて

  • サ高住は初期費用・月額費用は有料老人ホームより安い
  • サ高住のほうが有料老人ホームより自由度の高い生活が送れる
  • 介護度が高い場合は体制が整っている介護付き有料老人ホームが安心して利用できるがサ高住でも「介護型」であれば介護サービスを受けることができる。

ここまで有料老人ホームとサ高住の違いを解説しました。
有料老人ホーム、サ高住ともに施設によって入居条件、費用やサービスが異なるため
入居前に各施設がどのくらいの体制を整えているのか、どのようなサービスが提供されているか十分に調べることが大切です。

作成日:2024年3月27日