2024年1月22日に行われた社会保障審議会・介護給付分科会にて、令和6年度の介護報酬改定の詳細が明らかとなりました。
本ページでは、介護報酬改定の最新情報から令和6年度の介護報酬改定のポイントを解説します。介護事業所を運営されている方はぜひ参考にしてください。
令和6年度の介護報酬改定は、従来行われていた改定よりも大きなプラス幅の改定となりました。令和6年度の介護報酬のポイントや介護報酬改定の背景についてまとめます。
介護保険制度は、2000年に施行されて以来、定期的な見直しが行われています。定期的な改定の背景には、介護サービスの利用者となる高齢者の増加と保険料を納める働き手の減少という少子高齢化が関わっています。
特に、2024年は「2025年問題」の直前となっており、重要な法改正とみられています。社会情勢や環境の変化に合わせた制度設計にすることで、利用者やその家族が適切なサービスを受けられるようにするというのが、介護報酬改定です。
介護報酬改定の目的としては、増加する要介護者(サービス利用者・高齢者)に対して、介護業界全体が慢性的な人材・財源不足に陥っている点の解消・補填が介護報酬改定の目的となっています。
財源確保及び介護職員の処遇改善を促すことで、介護人材の確保および適切な介護サービスの運営を行えるようにする改定が定期的に行われています。
令和6年度の介護報酬改定では、介護報酬全体の改定率は「1.59%」のプラス改定になることが決定しました。1.59%の内訳として、介護職員の処遇改善が「0.98%」、その他改善が「0.61%」とされており、主に介護職員の処遇改善を進める方向となりました。
また、介護施設の基準費用増額による増収が見込まれており、改定率の外枠での引き上げが「0.45%」、全体では「2.04%」相当のプラス改定となる見込みです。
令和6年度の改定は、4つの視点から改定内容が定められています。
介護を必要とする利用者に質の高いケアサービスを切れ目なく提供できることを目指しています。改定の内容としては以下のようなものが挙げられます。
介護人材に対する処遇改善や働きやすい職場環境づくりを行うことで、介護人材の不足・流出防止に対処する内容が盛り込まれています。
主な改定内容は以下の通りとなります。
高齢者の自立支援や現状からの重症化防止を実現するため、地域での情報連携を推進しています。
介護保険制度の安定性と持続可能性を確保しながら、将来にわたって全世代が安心して介護サービスを受けられる制度の構築を目指した改定内容が盛り込まれています。
その他の内容として、令和6年度の介護報酬改定に盛り込まれた変更点は次の通りとなります。
令和6年度の介護報酬改定は、提供する介護サービスの種別によって施行時期が異なります。提供するサービスの内容によって、自社に影響が出る時期が変化しますので、注意しましょう。
令和6年度の改定では、サービスの種別によって令和6年4月施行と令和6年6月施行に分かれることが示されました。令和6年6月に施行されるのは、医療と関係する以下のサービス種別です。
令和6年4月に施行されるのは以下のサービス種別です。
ここからは、令和6年度の介護報酬改定によって、どんな影響が出るのかをまとめていきます。
令和6年度の介護報酬改定では、1割負担の利用者が減少し、2-3割負担の利用者が増加する形での利用者の負担増が見込まれています。これにより、従来よりも高い費用を支払うことになるため、利用者のサービス利用頻度の低下やより慎重な施設選びを行うことが予想されています。
令和6年度の介護報酬改定では、従来よりもより各地域の類似サービスの連携が求められる改定となりました。そのため、地域包括ケアシステムの強化に事業者が対応することが必須と見込まれています。利用者の側から見れば、同一地域の介護や医療サービスの連携がこれまで以上に密になるため、適切な体制でサービスを受けることができ、サービスの充実度が高くなるといえるでしょう。
ITツールなどを活用した経営・業務の効率化を行えば、人員配置基準が緩和される方針が示されました。これにより、少ない人数でも施設を運営することができ、スリムで効率のよい経営を目指すことができるでしょう。ただし、利用者側の負担増も見込まれているため、サービスの現状維持を行っている場合には、利用者が離れていってしまう可能性もあります。利用者のニーズに合わせ、「選ばれる施設作り」がこれからますます重要になるといえるでしょう。
令和6年度の介護報酬の改定を踏まえ、どのような対応策を取ればいいのかを紹介します。
令和6年度の介護報酬改定は、診療報酬、介護報酬、障害福祉サービス等報酬の改定が重なるトリプル改定として、従来よりも変動幅が大きく、注目度も高い改定となります。ボリュームも多いため、全ての変更項目に目を通して理解するのは難しいかもしれません。そのため、介護報酬改定のポイントについて解説している記事や動画を閲覧し、自社に関係する点を理解していくようにしましょう。
また少子高齢化が進む中、今後の介護報酬改定は令和6年度に改定された点のDX・業務効率化や地域内連携がさらに強化していくことが予想されます。そうした点からも、介護報酬改定の背景も含めて改定内容をみていくと、より理解が進むでしょう。
令和6年度の改定では、少子高齢化に伴う「サービス利用者の増加」と「サービス提供者・負担者の減少」に対する改定が顕著となりました。その中で、サービス提供者側ができる取り組みは以下の通りです。
医療や介護・福祉の分野の関係者に求められる対応の一つは、地域内連携(地域包括ケアシステム)の強化です。今後は各分野のサービスが「地域完結型」へと移行していくことが予想されるため、これまで以上に地域内での連携を今から強化しておくことが重要となるでしょう。かかりつけ医や病院、介護施設の横の連携を強化するために、各施設同士の提携やシステム投資などを行っていくとスムーズな移行が可能になるでしょう。
令和6年度の介護報酬改定にかかわらず、今後の日本では少子高齢化がさらに進み、サービスの提供者が減少し、利用者が増加していくことが明らかです。今回の改定でも人員配置基準の変更に触れられていましたが、今後はさらに緩和されていくと思われます。そんな中重要なのが、業務の効率化です。介護従事者1人がみることができる人数が増えるということは、それだけ1人の業務量が増えることになるため、適切な業務効率化が必要になります。業務フローの見直しや業務効率を上げるためのシステム投資が重要となってくるでしょう。
令和6年度の改定は介護報酬だけでなく、診療報酬や障害福祉サービス等報酬の改定が重なったトリプル改定であり、大きな変化となります。今後待ち受けている2025年問題や2040年問題といった、少子高齢化に伴うサービス提供の不安定さに対した改定も多く、今後もこういった方針の介護報酬改定が継続するであろうと思われます。
介護報酬改定に対して、毎回すべての改定内容を理解して対策を行うのは非常に難しいことです。そのため、自社が関係する範囲や改定の背景を踏まえて各改定のポイントを理解し、自社にできるところからスピーディに改定についていく姿勢が大切になります。
特に今後は、少子高齢化が進んでいくため従来以上に広範囲かつ大胆な介護報酬改定が発表される可能性もあります。ポイントを絞って改定を理解し、少しずつでも介護報酬改定にしたがってニーズにあった介護施設を運営していきましょう。