買い手向け

グループホームは儲かるのか?経営のメリット・デメリット

  1. 介護・医療・福祉のM&AならCBパートナーズ
  2. M&A・事業譲渡コラム
  3. グループホームは儲かるのか?経営のメリット・デメリット
デイサービス M&A

はじめに

グループホームには、「認知症対応型共同生活介護」(通称:認知症グループホーム)と「共同生活援助」(通称:障がい者グループホーム)の2種類が存在します。

本コラムでは主に認知症グループホームに焦点を当て、その特徴、市場規模、経営のメリットとデメリット、成功のコツについて詳しく解説します。高齢化社会の進展に伴い、認知症グループホームの需要は年々増加しており、介護業界において重要な役割を果たしています。しかし、その経営には様々な課題も存在します。このコラムでは、グループホーム経営の現状と将来性、そして成功に導くための戦略を探ります。

グループホームの経営について無料相談する

「認知症グループホーム」と「障がい者グループホーム」

グループホームには「認知症グループホーム」と「障がい者グループホーム」の2種類が存在し、それぞれ異なる対象者や目的を持っています。

認知症グループホームは高齢者向けで認知症ケアに特化し、進行防止と安心した生活環境の提供を目的としています。

一方、障がい者グループホームは幅広い年齢層の障がい者向けで、自立支援や社会参加を重視しています。同じ「グループホーム」という名称ですが、それぞれ異なるニーズに応じた役割を果たしています。

以下に詳細を記載します。

項目認知症グループホーム障がい者グループホーム
対象者認知症の高齢者知的・精神・身体障がい者、難病患者
法的根拠介護保険法障害者総合支援法
目的認知症の進行防止自立生活・社会参加
サービスの提供時間24時間体制夜間中心(形態による)
日中の活動レクリエーションや交流就労支援や社会参加
入居条件要介護認定と医師診断障害支援区分認定

 

◆認知症グループホーム

正式名称は「認知症対応型共同生活介護」で、介護保険法に基づいて運営されています。

対象者

  • 主に65歳以上の認知症高齢者(若年性認知症の場合は65歳未満でも利用可能)
  • 要支援2以上または要介護1~5の認定を受けた方
  • 医師から認知症の診断を受けていることが条件

目的

  • 認知症の進行を遅らせること
  • 家庭的な環境で少人数(5~9人)の共同生活を送りながら、日常生活を支援
  • レクリエーションや交流を通じて脳を活性化させ、生活の質を向上させる

特徴

  • 24時間体制で介護職員が常駐
  • 家庭的な雰囲気で、日常生活(食事、掃除、洗濯など)を支援
  • 地域密着型サービスとして、住民票のある地域での利用が基本

また部屋のタイプは主に2種類あり「ユニット型」と「サテライト型」に分かれます。サテライト型は2014年に新設されました。

〇ユニット型の特徴

  • サービス内容

    ・24時間の専門的支援体制

    ・食事、入浴、排せつなどの介護サービス

    ・洗濯、掃除、買い物補助などの生活支援

    ・服薬管理や健康管理

    ・認知症進行予防や身体機能維持のためのプログラム

     

  • 施設基準と特徴

    ・1ユニット5〜9人

    ・原則として1施設につき2ユニットまで(最大3ユニット)
    ・最低でも7.43㎡以上の個室を確保(収納スペースはこの面積に含まない)

    ・プライバシーを確保しつつも共有スペースで他の入居者やスタッフと交流が可能

〇サテライト型の特徴

  • サービス内容

    ・単身生活でより自立した生活を希望する方や一人暮らしが不安な方向け

    ・本体住居でのサービス(食事、レクリエーションなど)を必要に応じて利用可能

    ・単身生活をしながら、必要時に支援を受けられる

  • 施設基準と特徴

    ・本体住居から自動車等で20分以内の距離にあるアパートなどを利用

    ・より独立性の高い居住環境


◆障がい者グループホーム

正式名称は「共同生活援助」で、「障害者総合支援法」に基づいて運営されています

対象者

  • 知的障害、精神障害、身体障害、または難病を持つ18歳以上の方(15歳以上でも条件次第で利用可能)
  • 障害支援区分の認定を受けた方

目的

  • 障がい者の自立した生活や社会参加を促進すること
  • 一人暮らしへの準備や、規則正しい生活習慣の確立
  • 就労支援や日中活動を通じて社会とつながる機会を提供

特徴

障がい者グループホームには以下の4種類があります。

〇介護サービス包括型
事業所の従業者が相談や家事などの日常生活上の援助や介護を提供し、最も一般的な形態で、利用者数が最多

〇外部サービス利用型
主に夜間の相談や日常生活上の援助を提供。入浴・排泄・食事の介護は外部の居宅介護事業所に委託

〇日中活動サービス支援型
重度の障がいや高齢の方を対象とし、日中もグループホームで過ごせる。短期入所を併設している場合がある。

〇サテライト型住居
グループホーム近くのアパートなどで一人暮らしに近い形態で2014年に新たに創設。本体のグループホームとの交流や支援を受けられるが利用期間は2年間ほど。

グループホームの市場規模

認知症グループホームの市場規模

厚生労働省の研究では2040年には認知症の患者数は584万人にものぼり、高齢者の約15%を占めると推計しています。今後認知症患者の増加により、ケアの拠点としての認知症グループホームの重要性はさらに増していくと考えられます。

  • 事業所数
    約14,189事業所(令和6年7月時点)
  • 受給者数
    約21万6千人(令和6年7月時点)

出展:厚生労働省|介護給付費等実態統計月報(令和6年7月審査分)

10年前の2015年(平成27年)と比較すると、現在の事業所数は約1.4倍、受給者数は約1.2倍以上に増加しています。

事業所数の増加傾向は、認知症高齢者の増加や認知症グループホームの社会的役割の重要性が認識されていることを反映していると考えられます

これらの統計から明らかなように、認知症グループホームは高齢者の増加や介護ニーズの拡大に伴い、今後も市場の拡大が期待される事業といえます。

参考:厚生労働省|「介護分野の最近の動向について」

グループホーム経営は儲かるか?

独立行政法人福祉医療機構(WAM)が公表した2023年度(令和5年度)の認知症高齢者グループホームの経営分析参考指標では以下の分析が出ています。

~経営の現状~

収益性

2023年度の認知症高齢者グループホームでは、利用者1人1日あたりのサービス活動収益が前年比88円増加し、13,830円となっています。規模や棟数を増やすことでスケールメリットが働き、利益が増えやすい傾向があります。

利用率

2023年度の利用率は94.2%で、前年より0.4ポイント減少しています。入居者の退去率が低いことから、長期的な安定収入が見込めます。

経費とコスト・赤字施設の増加も

主な支出は人件費(従事者1人当たり約395万円)、建物維持費、水道光熱費などがありますが、夜間対応や設備投資に伴うコスト増加が課題となっています。また利用率の低下や昨今の人件費の高騰・物価高による運営コスト増加により、赤字施設も見られ、経営の効率化が求められています。

 

出典:独立行政法人福祉医療機構(WAM)|2023年度(令和5年度) 認知症高齢者グループホームの経営状況(PDF)

グループホーム経営のメリット・デメリット

〇グループホーム経営のメリット

1.顧客ニーズへの適応性
グループホームは、高齢者や特定のニーズを抱える人々に焦点を当てた介護を提供します。このため、地域の特性や需要に合わせて柔軟にサービスを提供できる点が大きなメリットです。特定のニーズに特化した施設は、地域の顧客層に深く浸透しやすくなります。

2.地域との強固な結びつき
グループホームは通常、住宅地域に所在しています。地域住民との交流がしやすく、地域社会との強固な結びつきを築くことが期待できます。これにより、地元のコミュニティとのパートナーシップが強化され、施設の認知度や信頼度が向上します。

3.小規模でのケア提供
グループホームは少人数で構成されるため、入居者への個別対応がしやすく、家庭的な雰囲気であることが多いです。小規模での運営が、入居者との信頼関係を築く基盤となります。

4.優れたサポート体制
グループホームでは、通常、専門のスタッフが入居者のケアに携わります。これにより、高度な介護や医療的なサポートが提供され、入居者の健康と幸福の向上が期待できます。

5.継続的な市場需要
高齢者の増加や介護需要の拡大に伴い、グループホームへの需要は今後も拡大すると予測されています。グループホームは総量規制のある事業であり、行政からの公募に選定されないと許認可取得できないという参入障壁の高さにより経済的な安定感と将来性が、グループホーム経営の魅力となっています。

これらのメリットからもわかるように、グループホーム経営は持続的な需要に支えられ、地域社会への貢献も期待できる事業形態です。
多くのメリットがある一方で、同時に注意が必要なデメリットも存在します。

×グループホーム経営のデメリット

1.人材の確保
介護サービスは高度なスキルや人間性が求められます。グループホームでは入居者との密なコミュニケーションやケアが必要なため、適切な人材確保が難しくなることがあります。また、計画作成担当者、管理者および代表者の人員配置が必要となり実務経験や研修を修了している職員でなければ配置できないため、人材確保のハードルは高くなります。

2.法令と規制への順守
介護施設は厳格な法令と規制に従う必要があります。これには建築基準、衛生基準、労働法規、安全基準などが含まれ、法令の変更や新たな規制への対応も重要な課題です。これらを遵守するためには、適切な法務アドバイスや専門家の協力が必要です。

3.入居者の特性による課題
グループホームでは入居者同士の関係が密接であるため、個々の入居者の特性や相性が事業に影響を及ぼすことがあります。認知症や精神的な課題を抱える入居者同士のコミュニケーション管理は難しく、これが施設内の雰囲気やサービスの質に影響を与えることがあります。

4.競争と市場の変化
介護業界は競争が激化しており、新たなプレーヤーが市場に進出することが頻繁にあります。地域の需要やライバル施設の増加により、入居者の確保が難しくなる可能性があり、市場の変化に対応する柔軟性が求められます。

5.予算と経済的課題
適切な施設の維持・管理には多額の予算が必要です。建物の維持や改善、スタッフの給与、必要な設備やサービスの提供には多額のコストがかかります。
特に予期せぬ建物の修繕費用が発生した際は資金繰りにも影響を及ぼします。これらの経済的な課題に対処するためには、的確な予算編成と効果的な経営計画が求められます。

グループホーム経営を成功させるコツ

◆法律や加算に関する知識のアップデート

グループホーム経営者は、建築基準、衛生基準、労働法規、消防法などの関連法令を正確に把握し、常に最新の規制に適応する必要があります。加算制度の理解と活用で収益を最大化し、法的トラブルを回避するために予防的な法的知識を身につけることが重要です。
さらに、専門家や弁護士との連携を通じて、最新の法的情報を入手し、潜在的な問題を未然に防ぐことが求められます。これらの取り組みは、適切な施設運営と経営の成功につながります。

2024年に発生し介護・福祉業界に大きな影響を与えた障がい者グループホーム運営会社の事例があります。
これは食材費の過大徴収やサービス報酬の不正請求など、組織的な違法行為を行っていたことが明らかになったもので、その事例によって、連座制が適用され、同社が運営する全国約100カ所の施設が順次指定取消処分を受けることになりました。この事例は、グループホーム経営における法令遵守の重要性を改めて浮き彫りにし、業界全体に厳格なコンプライアンス体制の構築を求める契機となりました。

※連座制とは・・・組織的な不正行為が認められた場合、同一法人が運営する他の事業所の指定更新や新規指定を認めない制度

積極的な集客

需要の高まりに関わらず積極的な集客活動が重要となります。効果的な集客戦略には、地域社会との連携強化、ウェブサイトやSNSを活用した情報発信、口コミと評判の管理、イベントや見学会の開催、そして地域の医療機関や介護関連団体との関係構築などが挙げられます。

これらのアプローチを通じて、施設の魅力をアピールし、入居希望者や家族との信頼関係を築くことで、安定した入居率の確保につながります。特に、SNS等のデジタルマーケティングの活用は現在の介護業界において、競争力を高める重要な要素となっています。

人材育成・教育に力を入れる

グループホームを運営していく上で、スタッフの質を高める人材育成・教育は不可欠となり、サービス品質の向上と施設全体の信頼性向上につながります。

まず、定期的なトレーニングプログラムや外部研修を通じて、介護の基本から専門的なスキルまで幅広く学べる環境を整備します。また、入居者ごとの個別ニーズに対応できる能力を養うための教育や、業務振り返りとフィードバック体制を導入し、スタッフのモチベーション向上と職場環境改善を図ります。さらに、キャリアパス制度を明確化し、昇進やスキルアップの機会を提供することで、長期的な定着率向上につなげることができます。労働環境の整備やチームビルディングも重視し、スタッフが働きやすく協力し合える職場づくりを推進することが重要です。

グループホーム経営に難しさを感じたら、知って欲しいM&A

人材確保、光熱費の高騰、後継者不在など様々な理由から、グループホーム経営の課題を解決する手段として、M&A(合併・買収)という手段があります。

M&Aのメリットは以下の通りです。

・資金調達

グループホームをM&Aで譲渡することで、企業や投資家からの資金調達が可能となります。これにより、別事業への資金投下など経営の強化に役立つ資金を調達できます。

・経営効率の向上

M&Aにより、効率的な経営体制を構築できます。不採算の事業を切り離すことでコストの削減や効率の向上が期待できます。

・従業員の雇用確保

M&Aにより、大手企業の傘下に入ることで従業員の雇用を確保することが可能です。大手企業の持つ専門的なノウハウや技術を取り入れることによりサービスの質や多様性が向上し、顧客に対してより高度なサポートを提供できるようになります。また、譲受企業の福利厚生サービスを享受できるなど、従業員にとってもメリットがあります。

・第2の人生をスタートするための資金を得られる

人材確保の難しい介護業界では経営者が現場に入り、不足している人材の穴を埋めるために休みなく勤務されている経営者様も多いです。譲渡対価を元手に新たな事業を立ち上げたり、家族と過ごす時間に充てられたりなど第2の人生をスタートするための資金を得ることができます。

グループホームのM&Aにおける評価方法

グループホームのM&A評価は財務的要素と非財務的要素を総合的に考慮します。主な評価軸と具体的内容は以下の通りです。

財務的要素である企業価値は以下の3つの手法に分類されます。

  • ストアプローチ
    純資産価値に着目した評価方法=時価純資産+のれん方式など
  • マーケットアプローチ
    株式市場やM&A市場の取引価額を基準とする評価方法=類似会社批准方式など
  • インカムアプローチ
    企業の収益力に着目した評価方法=DCF法など

〇M&Aにおける企業価値の方法についてはこちらのコラムで解説しています。
>>>M&Aにおける企業価値はどのように決定するのか?

続いて非財務的評価要素についてです。

1.人材資産の評価
グループホームのM&Aにおいては、人材資産が非常に重要です。優れた介護スタッフや経営者の存在は、評価額に大きな影響を与える要素となります。特に人材の定着が図られているグループホームは人材確保が難しい業界だからこそ、譲受側企業からも高く評価されています。

2.地域特性の考慮
グループホームの地域特性は、市場価値に影響を与えます。需要が高い地域や将来の需要が見込まれるエリアは、評価が高くなる傾向があります。

3.施設の設備と品質
M&Aの相場においては、施設の設備やサービスの品質が評価されます。最新の設備や高品質な介護サービスが提供されている場合、相場はそれに応じて高くなることがあります。

4.法令順守とリスク管理
法令順守やリスク管理の徹底は、評価において不可欠です。適切な法的手続きやリスクヘッジが行われている場合、相場が安定しやすくなります。

5.事業の安定性と将来性
M&A市場では、事業の安定性と将来性が非常に重視されます。持続可能な経営計画や成長戦略がある場合、相場はこれに見合った評価がなされるでしょう。

 

◇◆M&A成功に向けたポイント◆◇

  1. 専門的なアドバイザーの活用
    M&Aプロセスは複雑であり、専門的な知識が求められます。専門のアドバイザーを活用することで、交渉の際の有利な条件を確保しやすくなります。
  2. 事前の評価と整備
    グループホームを売却する前に、事前の評価と整備を行うことが成功の鍵です。施設の価値を正確に把握し、問題点を事前に解決しておくことが大切です。
  3. 長期的なビジョンの提示
    譲渡価額を上げるためには、長期的なビジョンや成長計画を明確に提示することが必要です。投資家や買収者は将来の事業展望に興味を持つことが多いため、具体的な展望を示すことがポイントです。

まとめ

グループホーム経営は、認知症高齢者や障がい者の生活を支える重要な事業であり、社会的な意義が高い一方で、経営上の課題も多く存在します。人材確保の難しさや競争激化、法令遵守の必要性など、経営を安定化させるためには戦略的な取り組みが欠かせません。

こうした課題を解決する選択肢として、M&A(合併・買収)は有効な手段です。資金調達や経営効率の向上、人材雇用の確保など、M&Aを活用することで経営基盤を強化し、新たな事業展開や安定した運営が可能になります。また、譲渡対価を通じて次の人生をスタートする資金を得ることもできます。

当社では、グループホームのM&Aに関する専門的なアドバイスやサポートを提供しております。施設の評価から交渉、契約締結まで、複雑なプロセスを円滑に進めるお手伝いをいたします。

もしグループホーム経営に課題を感じている場合は、ぜひお気軽にご相談ください。介護・福祉業界専門スタッフが丁寧に対応し、最適な解決策をご提案いたします。

グループホームの経営について無料相談する

 

\CBパートナーズがご支援した介護事業M&A成約事例集/

資料を無料でダウンロード

作成日:2023年12月12日