CBパートナーズにてクリニック・病院の事業承継のサポートをしております長濱と申します。
今回は私が日頃業務に取り組む中で感じていることについて、主にクリニックの事業承継にフォーカスしてお伝えさせていただきます。
将来的に事業承継をお考えでいらっしゃる、
・医療法人の理事長
・個人クリニックの院長
皆様の目に、少しでも多くの当記事が届くことを願っております。
まず初めに、クリニックの事業承継は他業種の事業承継と比較し、かなり成約が難しいと言われております。
何か難しいのかを紐解き、主だった点を挙げさせて頂くと、
以上が挙げられると考えております。
それぞれ理由を解説していきます。
当たり前ではあるのですが、一番重要な点です。
勤務医の承継開業がトレンドになっているものの、開業することは一世一代の大勝負であることに変わりはありません。
また、見ず知らずの土地で開業するわけにもいかず、譲受主のある程度の地縁も必要です。
承継開業希望医師はたくさんおられますが、そこからピンポイントで後継医師が見つかるかどうかは、「ご縁」と言わざるを得ない状況があります。
最近では、異業種から医療業界への参入も盛んにはなっております。
例えば旧法の医療法人の場合、持分を株式会社が所有し、社員・理事の入れ替えを進めるようなケースです。
もともと管理医師候補をお抱えでいらっしゃる場合もありますが、大体は管理医師を募る採用活動を進める為、そこでも常勤で入れる医師がすぐすぐ見つかるかどうか、「ご縁」と言わざるを得ません。
従いまして、後継医師が見つかるかどうかは、事業承継のお手伝いをさせて頂いている当社においてもコントロールし難い「ご縁」に依存してしまう場合が多いことが、承継に際して、後継となる「医師」が必要であるに挙げさせて頂いた理由です。
「承継に際して、後継となる「医師」が必要である」の課題をクリアし、後継候補の医師がいらっしゃった場合でも次の課題があります。
それが、「時期」です。
例えば、譲渡主様がどうしてもあと半年後にご勇退したい理由があったとします。
そこで、後継候補の医師が見つかっていても、現職場の雇用契約上あと1年は退職できない場合、お話しをまとめるのは難しくなってしまいます。
一般的には、年度単位で動かれる勤務医が多いと言われております。
譲渡時期、タイミングの折り合いがつかずお話しがまとまらないケースも多いことが、後継医師は現在勤務医であるケースが多く、譲渡希望時期とマッチしないことがあるに挙げさせて頂いた理由となります。
これまでの多大なるご苦労の中で育ててこられたクリニックをお譲りするにあたり、少しでも高い「譲渡金額=価値」を付けて欲しいとお考えになられるのは当たり前です。
しかしながら、譲受する側の目線が異なってくることも当たり前です。
それが顕著に現れるのが、譲渡するクリニックが盛況であればあるほどのケースです。
譲渡主様は、これだけ盛況なのだからこれだけの価値を付けて欲しい、と考えます。
一方で、譲受主様は、盛況なクリニックほど患者様が現院長についている為、
「院長が勇退されたタイミングで患者離れが相当数起こる=今の売上の再現性が見込めない」
と考えます。
譲渡金額は、あくまで譲渡主様と譲受主様の合意が得られた中で成り立つものではありますが、一般的には現院長の報酬1年分であったり、医療法人であれば時価純資産分であったりと考えられている譲受主様が多いことも事実です。
双方の目線感の違いを埋めることがなかなか適わない場合も、お話しをまとめることが難しい理由となるため、譲渡希望目線と譲受希望目線の乖離が大きすぎる場合があるに挙げさせて頂きました。
私は、国の動向・人口動態等勘案した中で、インフラの中でも医療インフラの重要性が、今後ますます向上していくと考えております。
医療インフラを存続に間接的にでも寄与することが、今の私ができる社会貢献であるとも考えており、1件でも多くの事業承継を成約に導いていきたいと考えております。
クリニック承継の課題として今回3点解説させて頂きましたが、それを踏まえタイトルに戻り、
「将来的な事業承継を考えている医療法人の理事長、個人クリニックの院長」の皆様に是非お伝えしたいことがあります。
事業承継を考えているなかで、後継者がいらっしゃらない等、顕在的な課題が既に分かっている場合は、なるべく早くご相談をいただきたいと考えております。
という状況では後継医師が見つかるかどうか、かなり難しい可能性が高いです。
一方で、「今68歳で体も元気だけど、70歳くらいでは引退したいな」という将来的なビジョンをお持ちでいらっしゃる場合には、お話しがまとまる可能性が相当高まります。
例えば医療法人の場合、持分を譲渡し社員・理事の入れ替えを一部進め、経営権は実質譲渡したなかでも、ご自身が理事長もしくは管理医師として残って診療にあたっていただく、という働き方もあるためです。
持分を譲渡したとしても、理事長として残り診療にあたる場合は、現報酬を減額する必要はございません。
また、譲受側からすれば腰を据えて後継医師を探す時間が作れると同時に、新しい経営体制の中で、従業員との融合もじっくり進めることができます。
上記例でお伝えしたいのは、
「クリニック譲渡=引退ではない」
ケースもある、ということです。
事業承継の形は様々ございますので、将来的な事業承継をお考えでいらっしゃる理事長・院長がこの記事をお読みでいらっしゃいましたら、是非早めに当社までご相談頂けますと幸いです。
最後になりますが、直近の私の成約事例をご紹介させて頂き結びとさせて頂きます。
7年間後継者を探してきたがなかなかお話しがまとまらない中で、当社へご相談頂き1年弱で成約に至りました。
それだけの時間をかけてでも「当クリニックを地域から絶やしてはいけない」という理事長の想いに感動すら覚えました。
私個人ができることは有限ですが、その有限のリソースをフルに活用し、少しでも社会貢献ができますよう今後も精進して参ります。