高齢化社会が進み、有料老人ホームの増加が続いています。
その中で、住宅型有料老人ホームは有料老人ホームの6割を占める存在です。
住宅型有料老人ホームのM&Aを検討しているなら、
基礎的な情報については知っておく必要がおくのがベストです。
ここでは、現在の業界環境やM&Aを検討する際の注目ポイントなどを解説いたします。
ぜひ参考にしてみてください。
そもそも、住宅型有料老人ホームとはどんなものなのか、その実態について解説していきましょう。
住宅型有料老人ホームは有料老人ホームの約6割を占める存在で、要介護度が比較的軽度の高齢者向けの民間施設です。
介護保険の「特定施設入居者生活介護(特定施設)」の指定を受けていないため、「介護付」「ケア付」の表記を行うことができません。
また特定施設の指定を受けていない分ケア体制は施設毎に大きく異なり、介護・介護職員の配置基準もありません。
よって介護サービスは敷地内に介護サービス関連事業者が入るケースが多く、入居者が個別に契約して利用する形となります。
この場合、敷地外の他の事業者との契約も可能です。
尚、介護サービスの利用料は介護保険の対象となる部分の、1割もしくは2割の自己負担が必要となります。
住宅型有料老人ホームは居住施設という部分が出発点となります。
よって住宅型有料老人ホームでは、介護サービスは必要に応じて入居者が施設併設や提携先のサービスを利用して、ケアプランに基づき要介護度に応じて介護サービスを組み立てることができます。
ただし住宅型有料老人ホームには様々な種類があり、介護付有料老人ホームと同程度の介護サービスを提供する施設も増加しています。
一方で介護付有料老人ホームは自治体から「特定施設入居者生活介護」の指定を受け、施設と介護サービスが一体で提供されるサービスです。
そのため、介護付有料老人ホームでは、ホームで働くスタッフが介護サービスを提供します。
また施設での介護サービスはある程度パッケージ化がなされており、介護保険の限度額を超えて追加料金が発生することはありません。
住宅型有料老人ホームの現状について、下記を知ることで理解の幅が広がります。
それぞれを解説していきます。
高齢化社会の到来により国内では様々な介護施設が増加しています。
厚生労働省の調べでは高齢者向け住まい・施設の利用者数で大きな伸びを見せる施設が有料老人ホームです。
利用可能者数で見ると平成12年(2000年)に36,855人であったものが、平成30年(2018年)には514,017人となり10倍以上増加しています。
平成30年時点で特別養護老人ホームを始めとする介護老人福祉施設の610,000人に次ぐ利用者数であり、介護施設全体が増加の中でも住宅型有料老人ホームを含む有料老人ホームの増加が著しい状態です。
参考資料:
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000547178.pdf#search=’有料老人ホーム+推移+平成30年
介護業界は高齢者の増加及び人手不足の影響を最も受ける業界の1つです。
住宅型有料老人ホームは、介護・看護職員の配置基準はないものの、多くの施設で介護人材の配置がなされています。
しかし介護人材の不足の中で、介護職員の人件費は上昇しています。
また人手不足をカバーしサービスを維持するために派遣の受け入れを余儀なくされ、人件費が介護施設の収益を圧迫するケースも生じています。
大手信用調査機関の東京商工リサーチの調べでは、2018年の老人福祉・介護事業の倒産件数は106年と過去3番目に多い水準だったと発表されています。
訪問介護45件、通所・短期入所介護事業41件、有料老人ホーム14件の内訳ですが、有料老人ホームは前年の6件から2倍以上の増加となりました。
高齢者人口の増加はあるものの老人ホームの数も増加しており、入居者獲得競争も激しい状態にあります。
よって入居者獲得が進まず、苦しい経営を余儀なくされる事業者も存在します。
また絶対数は少ないものの、競争激化による入居者確保に苦戦する事業者の破綻も増えています。
参考資料:
https://www.koureisha-jutaku.com/newspaper/synthesis/20190123_02_1/
住宅型有料老人ホームのM&Aのポイントは、下記4点があげられます。
住宅型有料老人ホームは民間施設であり、「特定施設入居者生活介護(特定施設)」の指定を受けていません。
よって介護・看護職員の配置基準もないため、介護サービスの扱いについては、様々なケースが存在します。
また、M&Aを検討する際は、対象の施設がどのような形で介護サービスを提供しているか、その確認が必要不可欠です。
住宅型有料老人ホームの運営に加え、自社で介護サービス事業を展開する企業グループもあります。
しかし中小事業者の多くは、外部介護サービス事業者との連携により入居者に介護サービスを提供していることから、外部の介護サービス事業者との連携状況や提携内容についての確認が必要です。
大手中心に有料老人ホームでは、独自のブランドを付して展開するケースがあります。
例えば「家庭的な暮らし」であったり、「上質な暮らし」であったりなどです。
現に、業界大手のベネッセコーポレーションでは、「くらら」をはじめ7つのブランドで有料老人ホーム事業を展開しています。
また、既に有料老人ホームを複数展開する企業の場合、運営する施設に付された名称が業界内で一定のブランド価値を持つ場合もあります。
利用者が入居施設を探す際に、大手企業の運営施設やブランドが確立している施設の場合、入居希望者は安心して入居の決断を下すことができます。
よって既に激しさを増している入居者獲得競争に、ブランド価値は優位に働きます。
有料老人ホームのM&Aを検討の際は、対象企業が運営する施設について業界内での立ち位置や評判を含めたブランド価値の確認が必要です。
尚、ブランド価値が高い場合は、施設の損益状況や資産内容とは別にブランド価値の存在のため、高い評価額でのM&Aとならざるを得ない場合もあります。
参考資料:
https://kaigo.benesse-style-care.co.jp/series_select
住宅型有料老人ホームは介護・看護職員の配置基準はないものの、施設運営に介護人材は欠かすことはできません。
しかし、介護業界全体で人手不足の状況にある中、介護人材の確保は各社にとって大きな経営課題です。
住宅型有料老人ホームのM&Aを検討の際も、対象先の介護人材の質・量の確認は必要不可欠です。
最低限の人数でギリギリの施設運営を行うことで、利益計上を行う事業者も存在するからです。
そのような運営だと、たとえ利益が出ていたとしても人材の質や量が不十分である可能性があります。
施設規模及びサービス実態に見合った人員で施設が運営されているのか、という点はM&A検討時の重要なポイントです。
高齢者が居住する住宅型有料老人ホームでは、医療機関との提携が必要不可欠です。
よって多くの施設では医療機関と提携をしています。
しかしながらM&A検討の際は、医療機関との提携の有無はもちろん、提携医療機関の規模(重篤なケースでも対応可能か)、提携医療機関との地理的な距離(素早い対応が期待できるか)などの確認も必要となります。
特に郊外の施設の場合、提携医療機関との地理的な距離に注意が必要です。
介護付有料老人ホームの場合は介護保険収入を得ることができますが、住宅型有料老人ホームの場合、収益源は居住者からの家賃などの収入が中心となります。
自社グループで介護サービスも提供できれば、グループとして総合的な収益計上も可能ですが、中小事業者の場合、介護サービスは外部提携先に任せるケースが多くなります。
よって住宅型有料老人ホームは事業面ではフリーハンドの側面が強い一方で、採算面や運営面をシビアに捉える必要があります。
また、介護事業ながら家賃等の収入が収益の柱となる住宅型有料老人ホームは、M&Aに際し独特の注意ポイントが多く存在します。
CBパートナーズなら過去の経験を踏まえて、適切なM&Aのアドバイスが可能です。
まずはお気軽にご相談ください。