いよいよ、2019年10月から、「介護職員等特定処遇改善加算」(以下、特定処遇改善加算)が始まります。
新設されるこの特定処遇改善加算は、現行の介護職員処遇改善加算に上乗せして取得できるものです。
現在の処遇改善策のルーツは、2009年10月開始の「介護職員処遇改善交付金」にあるとされていますが、当時、介護職員の賃金水準は低く、他産業への人材流出の防止が課題だったことから創設されました。
当初は例外的・時限的な措置とされた交付金は、その後、2012年度介護報酬改定で「介護職員処遇改善加算」として本体報酬に組み込まれています。
2009年から10年が経過する今、背景にある課題は変わっていません。しかし、今回の特定処遇改善加算の創設は、10年前とは置かれている状況がやや異なると言えるでしょう。
それはまず、日本経済全体の人材不足が常態化し、労働者の雇用条件への意識が10年前よりもシビアになっている点です。
いまや労働者は、様々な媒体の発達によって、他の雇用条件と比較する情報に事欠かない時代です。
また、処遇改善が進むにつれて、介護職員も処遇改善加算について一定の知識を持つようになりました。さらには、人手不足が特に懸念されている介護産業へ、10年前以上に世間の関心が高まっている点も挙げられます。
つまり、経営上の収支への影響という点だけでなく、いかにこの特定処遇改善加算と向き合い経営しているかを、外部からも評価される事を意味しています。
経営者の皆様にとって、重要な意義をもつ本制度を利用する為には、計画的な準備が必要です。
まだ時間的ゆとりがあるとお考えかもしれませんが、実は処遇改善内容の決定や、職員への周知のタイミングなどを考えると、時間は限られています。
10月からの利用を開始するには、以下のようなスケジュールで進められることをおすすめいたします。
特定処遇改善加算の具体的な配分内容を決める。給与規程などを改定する場合には、取締役会・理事会などによる決議を得るなど、必要な措置を講じる。
職員への説明を実施。給与規程改定時における従業員代表意見書などを取得。法的要件を満たしても、職員への説明が不十分な場合、労働基準監督署などに通報されて指導等を受ける可能性もあるため、説明から施行までの期間にゆとりを持つ。
『介護職員等特定処遇改善計画書』を提出。
加算の取得を開始。
上述した従業員への充分な事前説明は、特に重要と言えます。
ゆとりをもって周知期間を設けておくのは、手続き上の問題も然ることながら、職員の心理的な反応を考慮すべきだからです。
近年、労働者の権利意識は高まっていますし、もし対応が不誠実だと感じさせてしまえば、そうした評判はあっという間にひろがってしまいます。
だからこそ、今回の特定処遇改善加算は、キャリアパスを含めた制度を見直し、人材の定着・採用に向け、自法人に適した制度をつくるチャンスにすべきです。
うまく使いこなせば、法人としての体質を強化できる可能性があります。
こうした環境変化の波を、経営を中長期的に俯瞰するきっかけにし、2年先、3年先のビジョンを確認する。
経営者は孤独だと言われますが、こうした経営シミュレーションをする際に、ぜひ我々アドバイザーの存在をご活用ください。第三者から経営についてのコメントを得る機会というのは、日頃なかなか無いかと思います。
既存の事業状況をチェック(価値算定)することも無料で行っておりますので、お気軽にご相談ください。