介護・医療人材の不足が指摘され始めて久しいですが、現在も改善への糸口が見えてこない、むしろ言いようのない不安は大きくなる一方だと感じる事業者様が多いのではないでしょうか。
人口構造の問題から、医療・福祉産業に限らず生じている課題なので、当然と言えば当然なのですが、人材は事業運営に直結するだけに、経営者の悩みの種になりやすいものです。
こと介護事業においては、許認可要件を脅かしかねない問題でもあるからです。
私が考える解決策は3つです。
つまり採用です。先日、とてもユニークな取り組みが紹介されていました。
ある複数の法人が協力して、介護人材を獲得しようと「採用ドラフト」なる取り組みを始めたというニュースです。
求職者1名の採用に複数法人が一斉に参加するドラフト会議方式。
ドラフト会議の前段として、各法人幹部や人事担当者が、食事を兼ねた座談会を開き、希望が出ればドラフト会議に進む。
そこで求職者は複数法人に対してまとめて自己PRなどを行い、法人側は内定や最終選考の札を挙げるという仕組みです。
そしてそこで出された内定は生涯有効とするのだそうです。
気になる側面はあるものの、こうした斬新な手法が業界にイノベーションを起こす新モデルにならないかと期待しています。
「業界内で人材獲得を争っている場合ではない」という主催者の言葉が印象的でした。同時に、業界の実情を象徴している取り組みだと感じました。
個人的には、採用してからの「育成と定着」こそがもっとも大切だと考えています。
採用に追われ、ようやく充足したかと思えば1年以内で辞めてしまうといった状況が繰り返されれば、当然に組織は疲弊してしまいます。近視眼的な対応に終始することで、先行き不安を助長してしまっているのではないでしょうか。
具体的には、研修制度の充実やキャリアパスの構築(多様化)、自社のブランディング等が挙げられると思います。
会社側が従業員に対して、どんな価値を提供できるのかを考えなければならない時代です。
どんなに法人の理念やコダワリに共鳴して入社してきたとしても、結局その働きが評価に反映されたり、自己実現できる仕組みや風土がなければ、いい人材もその場を去っていってしまいます。
時間がかかる取り組みだからこそ、常に意識を傾けていないと実現できないテーマです。
3つ目がM&Aという手段です。
手段と表現したように、あくまでM&Aは1つの方法に過ぎません。ただ、そこで思い返して頂きたいのです。
それは、法人が存在することで果たされる役割です。
理念への共感について前述いたしましたが、その期待役割を担い続けるには、主体者が存在できなくなってしまっては元も子もありません。
社会経済や法律等の外部的要因が複雑化する中では、自前でその目的達成をし続けることは決して容易ではありません。
その時に、同じ目的をもつ法人同志が手を取り合うことは、とても意義高いことだと思います。単体の力では成し得なかったことが、できるようになることもあるはずです。
繰り返しになりますが、あくまでM&Aは1つの手段でしかありません。ただ、M&Aが問題を解決する合理的な方法になり得るということを、重ねて申し添えたいと思います。
皆さまのお悩みをお聞かせいただければ幸いです。