一般的な業界のM&Aでは見えてこない細かい事情が、それぞれの業界で存在します。
特に、医療が絡んだ事業においてはその傾向が顕著に見受けられます。
今回は、医療・介護・福祉業界に特化したM&AアドバイザリーであるCBパートナーズが、訪問看護ステーションのM&Aの実情と今後について解説させて頂きます。
訪問看護では、基本的に看護師が1人で利用者の住宅を訪問し、
ケアをするという形をとります。
訪問介護との違いとしては、
訪問看護のスタッフは、専門の資格を持った看護師のため、
訪問介護では提供ができない医療処置を行うことができるところです。
例えば、人工呼吸器の管理や点滴などは、
看護師であれば対応可能ですが、
訪問介護は介護士が訪問するため、
そこまでの医療処置を行うことは難しいです。
日本看護協会の推計によれば、
訪問看護を必要とする患者数は、
2020年には100万人を突破すると見込まれており、
高齢者人口の増加に伴って、
訪問看護の量的・質的な充実を図ることが、
国・訪問看護業界として大きな課題となっています。
訪問看護業界のM&Aの動向としては、全国訪問看護事業協会の調査によれば、事業所数は年々増加傾向にあり、特に都市部で多く稼動が見受けられます。
その中で訪問看護業界は、ニチイ学館やSOMPOホールディングスのような大手が再編期に突入し、M&Aで全国的に訪問看護ステーション数を増やす動きが多く見られます。
特に、大手でも訪問看護事業を運営するに当たって、
必要な人材(有資格者等)を確保することが大きな課題となっており、
訪問看護ステーション数と同時に人材確保を目的としています。
譲渡(売り手)側のメリットとしては、訪問看護事業の運営のリスクや疲れの解消、事業譲渡による譲渡金や大手傘下に入ることによる従業員の待遇改善も期待が持てます。
譲受(買い手)側のメリットとしては、
新規事業にスピーディに参入できること、
事業に慣れている人材を確保できることなどが挙げられます。
先述の通り、訪問看護事業においては、人材確保と参入のスピードが買い手のニーズになるため、赤字の訪問看護事業でもM&Aが実現する可能性は大いにあります。
訪問看護ステーションは、年々事業所が増加傾向になってはいますが、
3件中1件が廃業になる割合となっており、廃業する件数がかなり多い業界です。
廃業の理由は、
事業収支が赤字になってしまうことも理由の一つですが、
最大の廃業の理由は看護師の退職により、
訪問看護の常勤看護職員が1名以上というルールを守れなくなり、
事業の運営を継続できないことによるものがとても多いです。
そのため、廃業してしまった訪問看護ステーションでも、
看護師が数人在籍していたのであれば、買い手が付いた可能性も十分に考えられます。
また、訪問看護の事業所は、基本的に賃貸借であることから、
拠点の営業権の事業譲渡が一般的に行われます。
譲渡をお考えになる場合には、
できるだけ譲渡に至る理由を明確にすべきです。
人材不足なのであれば、どのような人材が何人足りないのか。
赤字なのであれば、どれくらいの売上/利益が見込めるか。
ここが明確になると、譲受(買い手)側も条件を出しやすく、
買収に手を挙げていただける可能性が高くなります。
売却の理由を明確にするといっても、先述した通り、
訪問看護ステーションのM&Aの現状の多くの理由は、
譲渡(売り手)側は「人材不足」、
譲受(買い手)側も「人材不足解消」
のためです。
そのため、訪問看護ステーションの譲渡を検討しても、
全く同じ売上/利益が出ていたとしても、
看護師が何人残っているのかによって、
買い手がつける価額には大きな差が生じてきます。
特に訪問看護の場合は、基本1人で現場で対応する必要があり、
経験の浅い看護師では少し難しい部分もあります。
そのため、新たに人材を確保しようとしても、看護師資格を持ち、
ある程度の経験を積んだ方を採用する必要があります。
これは、大手企業だとしても採用は難しいため、
譲渡を検討する場合には、少しでも多く看護師の方を会社に留めておくことが、M&Aをスムーズにするポイントとなります。
未だに需要に対して従事者が少ないというのが、
訪問看護業界の現状であり、
中小から大手まで看護人材の確保し、
需要と供給の差を埋めることが絶対的に不可欠です。
また、提供するサービスは、
病院の看護とは異なる知識やノウハウを必要とするため、
利用者のニーズに対応するためにも、
人材育成・教育が事業者に大きくのしかかります。
その部分をM&Aという手法によって、
解決しようとした事業者が大手を中心に出てきており、
中小企業や中小規模の訪問看護ステーションを
M&Aで買収する動きが活発化し始めています。
高齢化社会に突入している日本では、
訪問看護のニーズは年々高まっています。
しかし、先述の通り、業界全体で“慢性的な看護人材不足”となっており、自治体によっては、「セカンドキャリア支援」などの名目で、
経験を積んだ看護師の再就職の支援を実施するなどの対策に出ています。
このように人材不足から経営に苦戦する事業所が少なくなく、
これまでは、廃業を避けて譲渡を希望する訪問看護ステーションが増加しており、大手企業はそういった訪問看護ステーションを吸収し、
即戦力となり得る看護人材と、事業所を確保して自社の市場シェアを拡大させてきました。
この流れは市場のニーズとともに、ますます活発になると予想され、
人材確保以外にも、M&Aを利用して事業経営の建て直しを図り、
各地域の医療を支えていくという方向性もM&Aで今後活発になるでしょう。
少子高齢化が進む日本では、訪問看護に限らず、医療の現場の多くは人材不足が深刻です。
それに合わせ、医療業界は、収益性などがある程度国の政策によって決められてしまうため、報酬制度が変更になるたびに経営が苦しくなってしまう事業所が出てきます。
また、集客(集患)が簡単ではないため、
中小企業が運営する訪問看護ステーションは、伸び悩んでいます。
そのため、訪問看護ステーションの譲渡を希望する中小事業者は増加し、大手企業のニーズとマッチするため、今後さらに訪問看護のM&Aは増加するでしょう。
当社では、医療・介護・福祉業界に特化した専任のアドバイザーが
事業の価値算定から買い手/売り手のマッチングまで、
M&Aが成約するまで全て無料でご対応させて頂いております。
訪問看護ステーションのM&Aをご検討でしたら、
一度お気軽に当社にお問い合わせください。