介護業界の深刻な問題として、介護職の人材離れが挙げられます。
元々、2008年のリーマンショックを皮切りに、
派遣切りに遭われた製造業界の労働者を中心に、
介護職の雇用は軒並み増加しました。
しかしながら、「低賃金・重労働」である介護職の業務内容に耐えきれず、製造業の景気回復と比例して、介護職の人材離れが進んでおります。
そこで政府は、
「勤続10年以上の介護福祉士」に対して月額8万円相当の賃上げ を行うことを閣議決定しました。
月給8万円UP!と聞けば、とんでもない昇給です。
(年間にするとおよそ100万円になります。)
長年介護の現場で働いてきた方にとっては朗報だと思われますが、実際にはそこまで手放しで喜べるものではありません。
それは、以下の理由があるからです。
介護福祉士の賃金UPに関わる三つの要素がございます。
①支給要件が難しい
介護福祉士の平均勤続年数は6年と言われています。
つまり、10年勤続している介護福祉士は、介護職全体から見ると、ほんの一握り。
2019年の10月まであと2年ありますので、
平均的な勤続年数の介護福祉士にはまだ先の話になります。
②当人に直接支給されるわけでなく、事業所に支給される
この手の加算は個人に直接入る訳ではなく、事業所に入り、その月額8万円をどう分配するかは事業所次第ということです。
さすがに支給要件が厳しいことから、対象の介護福祉士に支給する事業所がほとんどだと思いますが、事業所によっては、異なった振り分けをされるところもあるかもしれません。
③財源の確保はどうするのか?
月額8万円を支給する財源はどうするか。
実はこの施策、1000億円ほどの財源が必要ですが、
現在、消費税の増税分などを考慮しても700億円ぐらいしか目途が立っておりません。
そうなると、どこから財源を確保するか…
と、考えると、税金だったり、介護保険の増額あるいは範囲の拡大化あたりに焦点が当てられます。
現在介護保険は、40歳以上が加入対象になっていますが、
将来的には財源確保のために、20歳以上になるのでは、とも言われています。
上記のような問題があり、単純に月額8万円上がるからといって、
介護福祉士の人気が高まることは、すぐにはなりそうにありません。
より抜本的な改革が行われる可能性は十分にありますので、
報酬改定と併せて、介護職員の処遇についての議論は今後も目が離せません。
と、なると介護業界も大手に集約される時期が早まってくるとも考えられます。