病院・クリニック

診療所の承継に際して家族が準備しておくこと

  1. 介護・医療・福祉のM&AならCBパートナーズ
  2. M&A・事業譲渡コラム
  3. 診療所の承継に際して家族が準備しておくこと

診療所の承継に際して家族が準備しておくこと

自院を第三者にお譲りしたいという相談は年々増えております。
最近では、理事長や院長が自ら問い合わせをされるだけではなく、家族からご相談頂くケースも増えて参りました。そういった背景から、今回はCBパートナーズに寄せられる相談の中でも数が多い、家族経営の診療所様に向けて、その家族が準備しておいたほうが良い事項について解説いたします。

家族からの相談が増えている背景について

院長の急逝や体調不良を理由としてご相談いただくケースはこれまでもございました。一方で院長が現役であっても、「年齢や後継者不在をはじめとする漠然とした将来不安」や、「ゆっくりセカンドライフを過ごしてほしい」といった家族の希望から、承継について教えて欲しいといった相談をいただくケースが増えております。

開業医に定年は無く、気力・体力が続く限りは現役というのがこれまでの通説であったと良く伝え聞きます。しかしながらその通説が作られた要因の一つとして、世襲制、すなわち親子間承継が前提にあったのではないかと私は考えております。多様性の進む現代において、院長のご子息ご息女が診療所を継がないケースや、医師ではないケースも珍しくありません。

またスマートフォンだけで、本当にたくさんの情報に触れることができる時代です。たくさんの情報に触れることができるゆえに、家族にとって混乱や不安が生じている可能性も考えられます。いずれにしても、院長が現役にも関わらず、その家族からの相談が増えている背景の一つとして、院長が望む未来と、家族が望む未来に違いが生じるケースが増えているのではと推察しております。

家族が準備しておくこと

今後考えられる選択肢を客観的に一度整理してみることをお勧めいたします。家族会議を進める上でも、院長だけでなく、そのご家族皆様が知見を持つことは、不安の解消や後悔の無い判断をしていく一助になると思います。

①今後も診療所を継続する(したい)
②将来的に閉院する

まずは大きく上記の選択肢が考えられます。今回はに焦点を絞ってご紹介していきます。

①今後も診療所を継続する(したい)となった場合に、考えられる選択肢は以下の2つです。

  1. 親族・知人への承継
  2. 第三者への承継

ここでのポイントは、いずれの承継にしても、

  • 承継に際しての院長の希望(勇退時期等)を家族が理解できているか。
  • 承継に際しての家族の希望を院長が理解できているか。院長と話ししたことがあるか。
  • 後継者はいるか。「親族・知人が跡を継いでくれるだろう」と思い込みで決めていないか。
  • 第三者承継において、CBパートナーズのような仲介業者などを活用する場合、
    どこに相談をするかが決まっているか。
  • (外部に依頼する場合)行政書士や司法書士といった各行政とのやり取りを
    任せられるパートナーはいるか。

といった「整理」を進めることが宜しいかと思います。

その整理を踏まえた上で、以下2点を充分に理解して頂くことが重要です。

  1. 第三者承継の場合、時間を要することが一般的であること
  2. 院長のご不幸などイレギュラーなことが発生する可能性にも備えること

1.について、具体的にどのくらいの期間を要するかを明言することはできません。私のご支援した事例では、受託してから半年で成約になったケースもありますが、理事長が譲渡に動かれてから7年で成約になったケースもあります。お相手が見つかるかどうかは、その時の「縁」によるところもあり、いずれにせよ時間がかかるのが一般的であることを踏まえ、早めの動き出しをお勧めいたします。

2.について、もしかすると多くの方が承知の上でご不安に感じられている点かもしれません。
もちろん家族の計画通りに話が進むのが理想ではありますが、必ずしもそうではない場合も起こり得ることを想定し、承継を考える上では事前に確認しておいた方が良いと思われるポイントをご紹介します。

  • 院長が診療できなくなった場合に、一定期間でも診療を任せられる医師がいるか。
    また代診探しを依頼できる医師紹介会社等との繋がりがあるか。
  • 顧問税理士はどなたか、いない場合は過去の財務諸表等の所在
  • 賃貸借契約書をはじめとした、各種契約書の所在
  • 定款、過去の社員総会議事録・理事会議事録等の所在(医療法人の場合)
  • 承継に際して社員の方々の意志確認(医療法人の場合)

以上となります。

また、承継に関連してですが、出資持分のある医療法人で、後継者は決まっているものの、堅調な経営と共に法人の純資産額が膨れ、相続や出資持分の払い戻しが不安という方もいらっしゃるかもしれません。その場合には、認定医療法人へ移行するという選択肢も考えられます。2023年度税制改正大綱にて、認定医療法人の税制上の特例期限が2026年12月末まで延長されております。ここでの解説は割愛させて頂きますので、厚生労働省のホームページなどをご参考下さい。

実際の事例など、より詳しい情報をご提供

診療所の承継に際して家族が準備しておくこと、としてご紹介させて頂きました。
今回のご紹介はあくまで大枠であり、個々の事例で考えると、より各論での準備が必要になると思われます。

本コラムでは、

  1. 診療所の承継に際し、その家族でも準備できることがあること
  2. 院長だけではなく、ご家族も交えお話を進めていく必要があること
  3. 第三者承継を考えられる場合には、早めに動き出すのが良いこと

この3点をお伝えしたく、寄稿させていただきました。

実際の事例も含め、より詳細な情報提供が欲しいという場合には、CBパートナーズまでお問い合わせ下さい。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。

事業譲渡・事業承継に関する相談をする