厚生労働省の社会保障審議会の介護保険部会から、2024年度の介護報酬改定に関する方向性がいくつか発信されました。なかでも大きな焦点となっている「新サービスと負担の見直し」について、多くの介護事業者も注目されているのではないでしょうか。
2024年の介護報酬改定において、利用者目線では、介護サービスを使う際の自己負担割合を一部の高齢者については増やすことなどを検討していましたが、結論は来年に先送りされることとなりました。
今回、目玉となりそうな介護報酬改定の内容は、通所介護の事業所が訪問サービスを提供することが可能となる新サービスの創設です。
これは、通所介護の事業所が訪問介護事業所と相互連携をし、市区町村を指定権者とする「地域密着型サービス」に新たなサービスを位置づけ、事業者がより柔軟にサービスを提供できる環境を整備することが目的とし、「地域密着型サービス」の枠組みに位置付ける予定です。
介護保険制度に新たなサービスが創設されるのは、2012年度に定期巡回・随時対応サービスと看護小規模多機能が作られて以来となり、2024年度に実現すれば12年ぶりです。
一方で、介護報酬改定は現状の制度の課題や各事業者の苦しい実情を浮き彫りにしています。
例えば、地域密着型サービスを運営する事業者であれば10年以上前の設立当初に比べ報酬を確保しづらくなっていることに加え、コロナ禍で利用機会の減少やクラスターによる営業停止等の影響を最も受けた事業でもあります。
また、先送りされた介護保険料に関しては、65歳以上の第1号被保険者が支払う保険料は年々増加し、制度が創設された2000年度は全国平均で月2,000円台でしたが、2022年度の現在は月6,000円台にまで負担額が上がり、2040年度以降には月9,000円程度まで増えると予想されています。
これらの喫緊の課題に加えて、今回の介護保険部会の報告書では将来的にはケアプラン作成の業務を支援するAI(人工知能)について、「実用化に向けて研究を進める」との方針も明記されました。
もちろんAIの活用は介護業界に限らず多くの業界で進んでおり、業務の効率化に欠かせないものではありますが、特に介護業界は従事者や利用者の人同士の繋がりが強く、その時々の感情や仕草によるコミュニケーションの重要性は計り知れません。
ケアマネージャーなどの方々が各事業所や利用者の実情を把握した上で介護サービスを繋いでいる現状を考えると、新たな技術の導入が介護サービスを補完してくれることは歓迎ですが、形骸化に繋がることがないよう祈るばかりです。