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医療事業承継(M&A)のスキーム選択の重要性

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事業承継やM&Aの必要性を感じた際の準備とスキーム選択の重要性

昨今、病院やクリニック様から経営的なご相談や事業承継・M&Aのご相談を多くいただくようになってきました。その背景には、創業者のご勇退時期の問題や診療報酬改定(オンライン診療、薬価改定等)、コロナ禍における医療事業経営の複雑化があります。

今回は、短期的、長期的問わず、将来的な事業承継やM&Aの必要性を感じた際に、まず何から考えればよいのか、お伝えいたします。
特に、非営利事業と分類される医療事業は、通常の営利事業とは異なる規制が存在しており、一般的な感覚とは大きく異なります。
折角のよい話が、スキーム等の問題によって覆ることもしばしばありますので注意が必要です。

事業譲渡と経営権の譲渡

まずは、営利事業とは異なる一面である「スキーム」について、お伝えいたします。

医療事業の承継方法は、大きく分けると
(1)事業譲渡
(2)社員・理事の変更 (法人譲渡)
の2種類で行われることがほとんどです。

(1)と(2)の大きな違いは、下記の通りです。
・開設者変更にかかる諸々の手続き
・対価の支払方法や受領者

(1)事業譲渡の場合は、開設者が変更となるため、該当地区の保健所・厚生局・都道府県への届け出、賃貸借契約、雇用契約、リース契約等すべての契約を結び直し又は名義変更が必要となります。

また、対価は、事業譲渡を行った法人で受領することになりますので事業譲渡益として、損益通算を行い法人税が課されます。
そのため、役員の退職慰労金支給も、同時期に行うことも多くあります。

社員・理事の変更のスキーム

次に社員・理事の変更のスキームについて解説します。
社員・理事の変更=医療法人と事業をそのまま承継する形式となります。

事業譲渡とは違い、社員・理事を変更するだけで承継が完了するスキームです。
(理事長及び理事が変更するケースがほとんどですので 行政への届け出や契約書上の代表者変更は行う必要はありますが、 新規での開設許可や保険指定等とは手続きが異なり、比較的簡便です。)

対価は、個人が受け取る形となりますが、出資持分の買取や退職慰労金等、複数の支払いスキームを複合的に使い、対価を支払うことが多いです。
ただし、法人様ごとの状態や背景によって、取りうる方法が異なるため、早めにアドバイザーや税理士に相談することを推奨いたします。

スキームを検討する上で準備すべきこと

重要なのは、「自社の状況を正しく知っておく」ことです。
皆様は、診療を含め事業の矢面に立たれ、お忙しくされている方々ばかりです。
「医療」と「経営」の両立は、冒頭記載した報酬体系等の複雑化により、年々難しくなっているという背景もあり、自社の状況把握も曖昧なケースも多くあります。

特に、把握しておくべきポイントとしては、以下です。

・医療法人の種類 (出資持分あり・なし、出資額限度法人、基金供出型等)
・出資者の変遷
・社員、理事構成
・定款や規定関連の内容 (残余財産の帰属や退職金規定等々)
・現在の資産、負債、契約
・損益状況の変遷

などは、最低でも把握していただくことを推奨いたします。
特に、設立が20年を超えてきますと、当時の出資者や社員構成は曖昧な記憶となっていたり、相続が発生していたりしますので要注意です。

なぜ早めに準備しなければならないのか

「早めにご準備ください」と常々お伝えをしておりますが、「今は、忙しくてできない」「もっと譲渡直前の準備ではだめなのか」とお話しいただくことがあります。

ご事情はよくわかりますが「だめです」とお答えしております。
承継やM&Aの難しさは、ご自身のタイミングだけではなく、承継される医師や医療法人があってのことですので、そこが非常に難しいポイントです。

冒頭申し上げました通り、営利法人とは異なるため、直感的な感覚と異なる規制やハードルがあることも多くあります。
より良い承継やM&Aをするためには、より自分や自社の状況や思いを伝え、譲り受ける相手とすり合わせを行うかが最重要ですので、そのための「準備」を可能な限り早く行っていきましょう。

当社では、実績に裏づく、準備~承継完了までのお手伝いを一貫して支援しております。
気になるポイント等ございましたら、お気軽にお問い合わせください。