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経営が上手くいっているサービス付き高齢者向け住宅の特徴

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サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)を取り巻く環境

2011年に「高齢者の居住の安定確保に関する法律」通称「高齢者住まい法」が施工されてから、全国的にサービス付き高齢者向け住宅の建設ラッシュが始まり、年々増加の一途をたどっているのをご存知でしょうか?

一般社団法人 高齢者住宅協会の発表によると、2015年12月末では5,885棟(191,871戸)の登録だったのが、2024年1月末では8,275棟(286,244戸)で、法整備直後のラッシュ時には及ばないものの、9年前と比べてもその数は1.4倍の数になっており、今後も増えていくことが予想されます。サ高住の登録状況では北海道、首都圏、愛知、大阪、兵庫、広島、福岡といった大都市が多くなっています。また新規参入で医療系事業者や、不動産業、建設業からの参入も増えています。

実際に、やり取りをさせていただく買収意向の強いお客様の中にも、「サービス付き高齢者向け住宅といった入居施設の買収を検討している」とのお声をたくさん頂戴しており、介護事業運営における1つのターニングポイントとして、サービス付き高齢者向け住宅のような入居系施設の運営を考えている経営者様が、多く存在しているといえるでしょう。

人気の高いサービス付き高齢者向け住宅ですが、必ずしも運営が順調に進むとは限りません。
今回は、その運営について詳しくご説明いたします。

出典:一般社団法人 高齢者住宅協会|サービス付き高齢者向け住宅の最新動向(2024年1月)

サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)とは

サ高住の定義

サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)とは主に要介護度が高くない自立している高齢者を対象とした、「安否確認・見守り」「生活相談」の2つのサービスを必ず受けることができるバリアフリー賃貸住宅のことです。高齢者住まい法の改正によって、2011年に創設されました。外出などが自由にできるため有料老人ホームより自由度の高い生活を送れることが大きな特徴です。
サ高住には「一般型」「介護型」の2種類あります。ほとんどのサ高住は「一般型」で、自立〜介護度の低い方を対象とし、介護サービスが必要となった場合は外部のサービスを利用することができます。「介護型」は厚生労働省が定めた「特定施設入居者生活介護」に指定されている施設で、要介護度が高くても入居でき、施設内の常駐スタッフから介護サービスを受けられる点が特徴です。

>>>サ高住と有料老人ホームの違いはこちらのコラムで解説しています。

サ高住の登録基準・登録事業者の義務

<登録基準>

設備・各専用部分の床面積は、原則25㎡以上
・各専用部分に、原則台所・水洗便所・収納設備・洗面設備・浴室を備えたもの
・バリアフリー構造(廊下幅・段差解消・手すり設置)
サービス・安否確認サービス・生活相談サービスを提供していること
・少なくともケアの専門家が日中駐在していること
契約内容・長期入院を理由とした一方的な解約ができないなど、居住の安定が図られている契約であること
・敷金・家賃・サービス対価以外の金銭を徴収しないこと
・前払金において入居者保護が図られていること

<登録事業者の義務>
・契約締結前にサービス内容や費用について、書面を交付して説明すること
・登録事項の情報開示
・誤解を招くような広告の禁止
・契約に従ってサービスを提供すること

<行政による指導監督>
・報告徴収、事務所や登録住宅への立入検査
・業務に関する是正指示
・指示違反、登録基準不適合の場合の登録取消し

出典:厚生労働省|高齢者向け住まいについて

サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)の経営タイプ

サ高住の経営方式は以下のように分けられます。

自主方式
土地のオーナーがすべての業務を担当する方式です。建物の建築から運営まですべてを担い、賃料収入から人件費などの販管費を引いた残りが利益となるため、収益率はもっとも高くなります。一方で経営に関する知識や経験がかなり必要となるため、もっとも厳しい経営方法といえます。

サブリース方式(一括借り上げ方式)
土地のオーナーがサ高住の建物を建築し、施設の運営は介護事業者が行う方式です。
入居者の確保や契約は介護事業者が行わなければなりません。

委託方式
入居者の確保や契約はオーナー自身が行い、介護サービスは外部の介護業者へ委託する方式です。
オーナは入居者から賃料と介護サービスの料金を受け取り、委託している介護業者に手数料を支払います。

テナント方式
委託方式と似た経営方式ですが、入居者の確保や契約や施設の運営はオーナーが担い、介護サービスの提供は介護事業者が行う方式です。
委託方式と違う点はオーナーが介護事業者から賃料やテナント料を受け取るという点です。

サ高住の収入・支出

サ高住を経営は発生する収入源やコストなどを把握しておく必要があります。
主な収入・支出の内容は以下のとおりです。

  • <収入>
    ・土地や建物の賃貸料・入居一時金
    ・テナント料
    ・生活支援サービス費
    ・市町村からの補助金
    ・食費、その他サービス費
    ・介護費用

  • <支出>
    ・土地購入費用
    ・建築費用
    ・保守費、修繕費
    ・人件費、採用費
    ・経費(備品代・水光熱費)
    ・各種税金

最も多く運営されているサ高住(サービス付き高齢者向け住宅)の特徴は?

介護付き有料老人ホームなどと比べて諸々に関わる基準が緩やかで、参入障壁が低いサービス付き高齢者向け住宅ですが、その始めやすさ故に様々な規模のサービス付き高齢者向け住宅が存在します。
皆様の周りにも1棟あたり15戸程度の比較的小規模なものから、1棟あたり50戸程度の大きなものまで、様々な規模のサービス付き高齢者向け住宅があるのではないでしょうか。

しかし、買収先として人気が高い規模のサービス付き高齢者向け住宅は、1棟あたり30戸以上の規模です。

これは、実際にそういった買収意向を多くいただくだけではありません。

一般社団法人 高齢者住宅協会の統計データによると、2024年1月末では8,275棟(286,244戸)から、1棟あたりの平均戸数は34.5戸となっています。
これには事業所の損益分岐点が大きく影響しており、1棟あたりの戸数が少ないほど収益を上げにくく、運営が難しいとされています。

また、50戸以上の大規模な事業所の場合では、その分人員の確保や建築コストの増大による資金調達の難易度が上がるため、
それらの課題を解決できる資本力が求められることとなります。

つまり、30戸前後が運営のしやすさと収益性のバランスが最も良いと考えられます。
実際に、15戸前後の比較的小規模なサービス付き高齢者向け住宅を運営される介護事業経営者様から、譲渡の相談が増えています。

出典:一般社団法人 高齢者住宅協会|サービス付き高齢者向け住宅の最新動向(2024年1月)

サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)のビジネスモデルと深刻な人手不足

サービス付き高齢者向け住宅の基本的なビジネスモデルは、入居者に訪問介護や訪問看護などの介護サービスを提供し、その対価として家賃や介護保険料を受け取ることで利益を得る仕組みです。入居者の介護度が高いほど、収益が大きくなる傾向があります。

しかし、介護サービスを提供するには、適切な人員が必要です。

介護度が低い入居者が多ければ、人件費が抑えられる一方で収益も減少し、
介護度が高い入居者が多ければ、人件費は増えますが収益も向上する

という、一長一短な状況に陥ります。

結論からお伝えすると、入居者の平均介護度を3前後に保つことが、「最も成功している事業所」とされています。
しかし、この平均介護度3の入居者を支えるためには、十分な人員を確保できるかどうかが課題となります。

特に、【人手不足が深刻な事業者や地域】では、必要な人員を確保できず、結果として介護度が低い、または自立した入居者しか受け入れられないケースが多発しています。このような状況では、収益を確保することが難しくなります。

しかし、裏を返せば、人員の確保ができれば収益を安定させることが可能です。そのため、【スタッフの確保に苦戦しているサ高住のオーナー】と【スタッフが確保できているがサ高住を持っていない事業者】の間で、事業承継が活発に行われているのです。

サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)の経営に求められること

先述のとおり、サ高住の開設が増えているため、経営戦略として他社との差別化を図ることは非常に重要です。
集客には以下のような取り組みが考えられます。

1. マーケティングで入居者の獲得と維持
効果的なマーケティングにより、ターゲットとなる高齢者やその家族にサ高住の魅力や提供するサービスを伝えられれば、集客につなげることができます。また、既存入居者に対しても満足度を高めるため、情報発信やコミュニケーションが重要です。

以下はマーケティングの一例です。

デジタルマーケティングホームページの最適化、SNSの活用、オンライン広告などを通じて情報発信
イベント開催見学会や説明会、地域イベントへの参加を通じて直接的な接触機会を増やす
パートナーシップ医療機関や介護施設、地域の企業との連携を強化し、紹介制度を構築
広報活動地域紙やラジオ、テレビなどのメディアを活用した広報活動

マーケティングは、単に入居者を増やすためだけでなく、施設の信頼性やブランド価値を高め、地域社会とのつながりを強化するためにも重要な役割を果たします。また自社ブランドを確立し、地域での評判や信頼性を築くことで、入居希望者に対して安心感を与えることができます。

2. 市場分析とターゲティング
市場分析によって地域の高齢者人口やニーズ、競合施設の状況を把握し、ターゲット層を明確にすることで、最適なマーケティング戦略を策定することができます。ターゲット層に合わせたサービス提供やプロモーション活動が重要です。

3. コミュニケーションと情報発信
自社のサ高住の特徴や提供するサービス、イベントなどの情報を効果的に発信するために、ホームページ、SNS、パンフレット、広告などを活用し、ターゲット層に適切な情報を届けることが求められます。

4. 入居者満足度の向上
満足度調査などを通じて入居者からフィードバックを収集し、それを基にサービスの改善や新しいサービスの導入を行うことができます。
入居者のニーズに応えることで、満足度を高め、口コミや紹介による新たな入居者獲得にも繋がります。

5. 地域との連携
地域の医療機関、介護施設、自治体などと連携を強化することも大切です。
地域イベントへの参加や、地域住民との交流を通じて、自社のサ高住の存在感を高めることができます。

【当社事例】サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)のM&A

当社でサ高住のM&Aをご支援した事例をご紹介します。

<ご相談いただいた経緯>
譲渡企業様は薬局事業を中心に展開しており、薬局とのシナジーを考えてサービス付き高齢者住宅を始められましたが、不採算の状況が続いたため承継を決心されました。
当社に相談いただいた際は、サービス付き高齢者住宅のみの運営されており、訪問介護事業等は行っておりませんでした。

<当社アドバイザーからのご支援>
本件のサ高住では、介護サービスの提供をされていなかったため、事業所近隣で介護事業を運営していて、シナジー効果が発揮できる法人にターゲットを絞り、譲受先候補を探すことをご提案いたしました。
また 赤字幅が大きかったため、家主である譲渡企業様に家賃交渉をご支援し、1年間のフリーレントという条件をご提案させていただき、成約につながりました。

<譲受企業様について>
以下2点の理由からご興味を持ってくださいました。
・既存事業所と距離が近く、現場の従業員の負担があまり増えなかった
・家賃交渉ができたおかげで、半年足らずで黒字化できる見込みが立った

本ケースにおける成約のポイントです。

  1. 利用者とスタッフへの説明
    サ高住の入居者の介護度は、要支援と自立が9割を占めており、この状況を変えなければ黒字化は不可能であるということが、売手様と買手様の共通認識でした。
    スタッフの業務は見守りと食事の配膳をメインで行っていましたが、承継後は業務内容が大きく変わることを前提に従業員告知を行い、勤務の継続が可能かどうかすり合わせを行いました。結果的に、無資格者の方は離職することになってしまいましたが、その分の人件費で有資格者の方を採用し、利用者の新規受け入れと平均介護度の上昇をすることができたため、早期に黒字化の目途を立てることができました。

  2. 家賃交渉
    不動産は引き続き売主様が保有することとなったため、売主様と家賃交渉を行い、1年間のフリーレント(家賃無料)と、さらに半年間の家賃の割引を契約内容に追加しました。 最初、売主様も賃料のご提案には驚かれていましたが、このまま赤字が続くとスタッフに還元できないというデメリットから、ご承諾されました。

 

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さいごに

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作成日:2023年11月7日